鹿島アントラーズは「ギフティング(投げ銭)」にどんな可能性を見たか?

カシマスタジアム


今後、勝敗が分からない試合を題材にしていけば、より多くの人がアクセスし、ゴールシーンなど感動してもらえる瞬間はより多くなる。今回はアントラーズにとっても「テスト」の意味合いが含まれていたが、反響を今後のアクション設計に活かすことができることからも、小泉は手応えを感じている。
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「ファンは試合をすごく待ち望んでいてくれている。良いコンテンツを提供すれば、絶対に見に来てくれることが分かりました。応援してくれているのも見て取れましたし、Jリーグにとっても新たな収益の機会として、今後ギフティングを一般化していけるのではないかという手応えもありました」

これまではクラブが収益化出来るのは主にホームゲームに限られていたが、ギフティングのような取り組みによって、パブリックビューイングなども含め、アウェイゲームのマネタイズも出来るようになってくる。また、年に何度もカシマスタジアムに足を運ぶことが難しかったファンにとっては、ユニフォームやグッズを購入する以外の新たな応援の形にもなる。

「今までJリーグとして収益化できていなかったところがテクノロジーでどんどん収益化出来るようになっていく思います。それがチームの強化費となり、より強く、より魅力的になっていく。チーム強化とビジネスの両輪がグルグル回るようになってきます。ギフティングみたいなものはJリーグの経営体力を強めるという意味でも大事だったのではないかと思います」(小泉)
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ベンチャー精神を持つスポーツクラブに


この中断期間、アントラーズはデジタル施策を加速させている。親会社であるメルカリからの出向者もいるクラブ内部ではスピード感を持って取り組めている、という。尾形もアントラーズとの話は「最初のミーティングから一週間半で実施まで実現できた」と振り返る。

「これからもアントラーズはベンチャー気質を持って、小さな取り組みから始め、それをブラッシュアップしてファンに感動体験を提供していきたい。色んなベンチャーのサービスを利用しながら、一緒に良いものを作っていきたいと思っています。スポーツは感動を与えるもの。そしてクラブは、それを提供するだけでなく、適切な価値として収入を得ることに向き合わなくてはいけない。Jリーグや他のプロチームが参考にできるような、良い事例を作っていきたい」と小泉は語る。

チャレンジをすることには失敗も付き物だ。だがアクションを起こさないことには変化も進化も生まれない。基盤がしっかりしたスポーツクラブがベンチャー精神を持つとどんな体験が生まれるのか。これからも続くアントラーズの「伝統と変革」を生み出す、さまざまなチャレンジを温かく見守っていきたい。

文=新川諒

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