鹿島アントラーズは「ギフティング(投げ銭)」にどんな可能性を見たか?

カシマスタジアム


「リアルで体験した価値がデジタルで増殖していき、それがまたリアルで見ている人たちに返ってきます。オンラインとオフラインの両方の体験がどんどんアップデートされていく流れは今後も加速すると思っています」

現在はオンラインでのギフティングという取り組みだが、公式戦再開後はスタジアム内で試合を楽しむ人も当然ながら出てくるだろう。そうするとピッチで起こっている試合、サポーター個人が持つ端末、そしてスタジアムのビジョンの「トリプルスクリーン」を活用してリアルな場でもファンを楽しませる機会を生み出していくことが可能となる。

横一線となったスポーツ業界で新たな施策の提供


コロナ禍によって事業の可能性が広がったのがookamiだ。代表の尾形はスポーツ業界の現状を以下のように捉えている。

「新型コロナウイルスの影響によって、スポーツ業界が一気に横一線となり、世界同時多発的に同じ課題にぶつかりました。どのクラブも何をすべきか頭を悩ませていたと思いますが、私たちは一気に業界を変えていけるチャンスだと思いました。元々、Player!はスポーツ観戦をオンライン化することを目的に取り組んできたサービスなので、スポーツ観戦のオンライン化が喫緊の課題となり、どのような価値を発揮できるかを考えている中で、鹿島アントラーズとの取り組みは先進的で良いものになりました」

Player!は現在は約1000の大学スポーツやアマチュアスポーツのチームと提携し、それらの試合を中心に配信。またOB・OGの会費集金機能を展開し、この1年間で実績を作ってきた。それが今回の「ギフティング」のベースの機能となっている。

Player!が最も大切にするのは、どうやってチームに収益を還元できるかということだ。他のサービスとは異なり、手数料をビジネスとしていない。ファンとクラブの関係性を高め、ユーザー数を増やすことが収益に繋がると考えている。

「これから先、無観客試合、または観客数を制限した試合が続いていくことが予想され、従来のようなスタジアムを満席にする方針がガラッと変わってくると思います。その中で私たちが持っている機能、オンラインのファンコミュニティー化で、熱量の高いファンの方々にも価値提供できないかなと思っています」



「ギフティング(投げ銭)」の可能性 


アントラーズとPlayer!の取り組みである「鹿ライブ」は、結果がわかっている過去の試合ながら、総視聴回数が約6万回、総視聴者数は約1.5万人が参加した。ギフティングの金額以上に、ファンからの好意的な反応が多く見られ、クラブとの接触を望んでいたファンにとっては絶好の機会となったと尾形はいう。

「アントラーズのサポーターが熱く、温かったこともあり、たくさんの方々が参加してくださいました。既存の顧客ベースが強かったからこそ、スタジアムを満席にする数に優に至ったのだと思います」
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文=新川諒

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