確かに2020年東京五輪のスポンサーシップ契約は2020年12月末まで。開催延期が決定し、すでに3カ月が経とうとしている中、スポンサー契約についてはすでになんらかの進捗もしくは合意がなされているのだと、私は勝手に思い込んでいた。
しかし、アンケートで「延長する」と回答した企業はわずか12%であり、また延長により追加協賛金を求められた場合には「できない」「金額による」と答えた企業が14%あった。
五輪中止論について関係者も賛否
2020年に五輪が開催されないということを考慮すると、企業の宣伝部からは「契約不履行」の訴えがあったとしても無理からぬ状況。スポンサーシップ契約は五輪の開催が前提だったはずであり、天変地異などによる免責が含まれていたとしても、交渉が簡単に進むわけもない。
NHKの報道によれば「ウイルスの影響で宣伝の機会が失われている。大会が中止になる可能性もあり、追加負担は慎重にならざるをえない」と答えた企業もあったという。
五輪関係者は「来年も中止になるのでは」という疑念を打ち消すのに躍起となっている。大会組織委員会の森喜朗会長は国際オリンピック委員会(IOC)の理事会が開かれた6月10日に中止の議論は「全くしていない」と断言。IOCのトーマス・バッハ会長は11日、「(来夏開催に向け)100パーセント集中しており、それ以外のことは単なる臆測だ」と発表。これは自身が5月に口にした「2021年夏の開催が不能な場合、大会そのものを中止」とした自身の見解を軌道修正する形となった。
しかしIOCや東京の組織委員会がどれほど尽力しようと、相手は世界的パンデミックを引き起こした新型コロナウイルスであり、対処できる方策はほぼ無に等しい。ワクチンの開発などにより、年内に無事終息するよう祈るしかない。
実際、今年を振り返ると背景が理解しやすい。2月14日、東京では大会実施に向け、調整委員会が開かれ、この後の記者会見において、IOCジョン・コーツ調整委員長は「WHOからは大会を中止したり延期したりする必要はないとの助言をもらっています」と発言。私もこの記者会見に出席していたが、CNNを始めとする海外メディアも多く、記者からの質問はほぼ新型コロナ対策についてだった。にもかかわらず、委員会は「政府の方針を遵守する」との回答に終始。主催団体として特別な対応策を講じる予定はないとの姿勢に物議を醸したのも記憶に新しい。
3月11日にWHOがパンデミックを宣言。翌日、ギリシャでは東京五輪の聖火採火式が開催され、この時点でもバッハ会長は「採火式の実現は東京オリンピックの成功に向けた私たちの決意を改めて表している」と開催を強調した。