経済・社会

2020.06.22 08:00

東京五輪は果たして2021年に開催されるのか 新型コロナとスポンサー問題


組織委員会の収入内訳は、国内スポンサーからの協賛金3480億円。チケットの売上は900億円となっている。冒頭に示したように国内スポンサーの中には、2021年の契約について難色を示す社もあり、追加協賛金の積み上げに期待するのは難しい。観客動員による900億円も無観客開催となると危ういのではないか。

しかも延期による追加コストについては「数千億円規模」と見込まれている。明るい話題は、IOCが5月にオンラインによる理事会を開き、東京五輪延期に対する追加予算8億ドル(900億円弱)を負担する対応策を承認したことぐらいだろうか。

コスト圧縮 コンパクト化の方向性


来年の開催については、「コンパクト化」という方向で調整が進んでいる。来日する国賓を厳選し、選手たちに随行する関係者を減らすとしているが、さらに無観客も含めた実施が検討されている可能性は残っている。

900億円のチケット収入が消し飛んだとしても、観客動員にまつわる警備の縮小、ボランティア参加者の削減などに手を尽くし、コストを圧縮する方向は模索できる。そして、来年までに有効なワクチンが開発されない限りは、新型コロナ対策として考慮すると「無観客」はやむを得ないのではないか。高橋理事の発言はこうした収入喪失を換算してのものだろうか。万全を期しての2022年開催を模索するのか。もはや、予測は困難だ。

ただしIOCにとって全面的な東京五輪中止という選択肢は想定しにくい。無観客だろうと再延期だろうと決行されることでIOCに転がり込むことになるNBCの五輪独占放映権料44億ドル(14年ソチ冬季大会から20年東京夏季大会までの権利)を含めた巨額放映権を死守しなければならないからだ。今年、日本政府による延期発表に先んじて、トランプ大統領が「延期すべきだ」と発言した点は、その証左だろう。ビジネス的には、無観客か再延期かに関わらず「決行」がボトムラインだと推察される。

万が一、東京五輪中止という決断に至れば、日本にとっても1兆3500億円、まるまる無駄遣いに終わり、決行の場合は1兆8000億円程度の予算計上が想定される。いずれにせよ、頭が痛くなるそろばん勘定だ。

新型コロナ対策の第2次補正予算は、総額31兆9000億円。ひょっとすると日本政府は、それに比べれば数千億円規模の影響なぞ微々たるもの……と延長決行であるなら意に介していないのかもしれない。

私自身、リオに敗れてしまったものの2016年東京五輪招致ではデジタル・メディアを担当し、2013年9月8日未明にジャック・ロゲ前IOC会長の「TOKYO!」という発声も日比谷の東商会館で松岡修造さんらとともに歓声を上げたひとりとして、東京五輪の通常決行を願うばかりだ。そして何よりも、これまで競技に打ち込んできたアスリートの努力に報いるため、大会の成功を祈りたい。

関係者にとっては、進むも戻るも茨の道となる大会であることに間違はなさそうだ。

連載:5G×メディア×スポーツの未来
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文=松永裕司

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