東京五輪の開催延期が正式に決定されたのは、それから2週間も経たない3月24日だった。五輪開催の可否の意思決定は、IOCの意志とはほぼ無関係だと言えるだろう。
2月14日に開かれた東京五輪の記者会見。このときはまだ「延期」すら示唆していなかった
バッハ会長や森会長がこれだけ躍起になっているにも関わらず、6月16日には組織委員会の高橋治之理事が、2021年の開催が危うい場合、再延期の方針もありえると主張したとの報道がなされた。
この発言は「たかが一理事のコメント」では済まされない。高橋顧問は電通の元専務だ。電通のスポーツ・ビジネスを確立した人物でもあり、現在の電通五輪関係者は彼の影響下にあるといっても過言ではない。五輪の国内スポンサー担当は電通だ。冒頭のスポンサー・アンケートに関連する裏事情を推測してみたくもなる。
新型コロナ世界的には未だ収束せず
世界を見回しても新型コロナウイルスの感染が収束に向かっているとは考えづらい。
6月12日の時点でアメリカの感染者数は212万人、死者は11万7000人。1日の感染者数は758人。これは感染が拡大し始めた3月末日の554人を上回ったままの状況を示している。いまだ感染拡大が続いているブラジルでも同様に、95万人以上が感染、4万5000人以上が死亡し、アメリカに次ぐ感染者数となっている。
6月13日付の産経新聞には「コロナ死者 公表上回る恐れ」の見出しで、都内で感染が拡大した3月、4月、過去の同時期を比較し、超過死亡者が1481人にも上るとした。超過死亡者数については日本のみならず、欧米でも議論され、今後新型コロナ関連死として数字が積み上がって来る可能性もある。
日本では緊急事態宣言、東京アラート解除に続き、プロ野球が19日に開幕。7月4日にはJリーグのJ1もスタートする。しかし、新型コロナウイルスへの決定的な解決策が講じられたわけではなく、選手が国をまたがって移動する国際スポーツ大会の再開については慎重論が目立つ。「コンチネンタル・サーカス」とまで呼ばれるF1グランプリは鈴鹿サーキットで10月11日に決勝が予定されていた日本大会を中止すると12日に発表した。まだ5ヵ月も先のレースにもかかわらずだ。
こうした世界的な状況と関係者の憂慮からすると、東京五輪は「無観客」による2021年開催、もしくは2022年への延期が現実的と考えても不思議ではない。
しかしながら、2012年無観客開催、2022年への再延期開催、どちらに転んでも東京五輪の巨額支出をどう捉えるかという大問題は残る。
延期決定前、2019年12月にまとめられた予算計画第4版によると、大会予算は東京都が6000億円、組織委員会6000億円、国が1500億円を負担。総計1兆3500億円と見込まれていた。