広告界では有名なAIDMA理論(Attention → Interest → Desire → Memory → Action)も、このことを表している。注意を引いて→興味を持ってもらい→欲しいと思わせ→商品名を覚えてもらって→Action(購買)してもらうというモデルだ。
しかし、現在の尺度で見ると、これはとても悠長な感じがする。情報量が各段に増加しているいま、AIDMA理論に従っても、Actionまでなかなかたどり着ける気がしない。
また、AIDMA理論はリアル店舗での購買を前提にしているわけだが、アマゾンなどのECが発達したいまでは、我々の購買行動自体が大きく変化している。わざわざお店に出かけて行って、さあこれを買おうと思って買うのと、手元のスマートフォンを見ていて、レコメンドされたものをポチっとタップして買うのとでは、事情は大きく異なる。
体験を伴って「行動させる」広告
こういった時代を反映して、広告コミュニケーションも、より直接的にアクションにつなげる施策が求められている。注意を引いて興味を持ってもらうことができても、Actionまでなかなか繋らない例が増加したためだろう。
Attention(興味)をダイレクトにアクションに繋げて、高い評価を得た広告の事例を紹介しよう。2014年のカンヌライオンズで、アウトドア部門ゴールド、プロモ&アクティベーション部門ゴールドなどを受賞した「SOCIAL SWIPE(ソーシャル・スワイプ)」という広告だ。
SOCIAL SWIPE(ソーシャル・スワイプ)
ドイツの人権団体「MISEREOR」が行ったもので、遠い外国で食事に困り、人権を蹂躙されている子供たちを助ける寄付に関して、「呼び掛ける」のではなく、直接的にアクションを起こさせる広告だった。
街中に設置されたデジタルサイネージ(電子看板)。ビジュアルは縄の手錠をはめられた子どもの手で、ちょうど手錠の真ん中に、クレジットカードを通らせる溝が設けられている。
この溝にクレジットカードを通してスキャンさせることを「Swipe」と言うわけだが、ここにクレジットカードをSwipeさせると2ユーロ(約300円)が寄付され、看板の縄の手錠が断ち切られる。