「観客動員」以外の軸も──横浜DeNAベイスターズが模索する、withコロナ時代の球団経営

横浜DeNAベイスターズが本拠地・横浜スタジアムで開幕を迎える

予定していた開幕日から、遅れること約3カ月──ついに今日、プロ野球が幕を開ける。選手たちのワンプレー、そして試合結果に一喜一憂する日々が再び始まるわけだが、コロナ禍によってプロ野球界を取り巻く状況は例年と大きく異なる。

レギュラーシーズンが6連戦主体の“全120試合制”に短縮となったこともそうだが、何より違うのが“試合観戦のスタイル”だ。従来は球場へ行って応援するのが当たり前だったが、今年は新型コロナウイルス感染防止のため、当面の間は“無観客”での試合が続く。

どれだけ多くの人に球場へ足を運んでもらうか。“観客動員数”に軸足を置いて経営に取り組んできた各球団は、ビジネスモデルを180度転換することが求められる。

とりわけ、横浜DeNAベイスターズにとっては頭が痛い話だろう。年々、観客動員数を伸ばし続け、昨シーズンは球団史上最多の観客動員数228万3524人を記録し、座席稼働率は98.9%を記録するなど圧倒的な成功を納めてきたが、今年は従来の手法が通用しない。

“無観客”での開幕が決まってから、横浜DeNAベイスターズはスタンド観覧席への「応援パネル」掲出権利などが含まれた「2020開幕応援チケット」を販売。また、OBの解説と共にオンラインでの試合観戦が楽しめる「おうちで交流!OB解説つき! オンラインハマスタ Supported by日本生命」の開催など、新たな取り組みを発表している。

ここ数年、“球団経営”の成功例として取り上げられてきた同球団は、コロナ禍におけるスポーツビジネスの形をどう考えているか。取締役副社長の木村洋太に話を聞いた。


取締役副社長の木村洋太(写真=小田駿一)

ニーズの把握だけでなく、ニーズの創出も


──予定していた日程から約3カ月遅れでプロ野球が開幕します。

ようやくファンのみなさんに“野球”を通じて、感動と興奮を届けられる。私たちも3カ月楽しみにしていたことですし、その第一歩を踏み出せたことは非常に喜ばしいことです。

その一方で、今までのような“観客動員”に軸足を置いたビジネスは今後厳しくなっていくことが思い知らされた状況でもあります。他球団もそうだと思いますが、満員にすることが“良し”とされていたものが、今では“避けるべき”ものとされています。価値観の変容がここまで急激に起こることは想定していなかったので、今後私たちもどれだけ柔軟に対処していけるかどうかが試されているんじゃないか、と思っているところです。

新型コロナウイルスのワクチンが開発されたら、これまでの観戦スタイルに戻るのか、それとも新しい観戦スタイルに行動変容が起きるのか、それは今シーズンを終えてみなければ分かりませんが、まずはどちらのケースにも対応できるようにしたいと思います。

ビジネスモデルを変える選択肢も当然頭に入れながら、この1、2年はあらゆる状況を想定しながら、物事を考えていかなければいけないと思っています。
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文=新國翔大

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