シリア難民の生活は新型コロナでどう変わった? トルコ現地レポート

トルコ南東部に暮らすシリア人、アハメッドさん(仮名)


なぜ世界からの支援が必要か


アハメッドさんはまだ30代半ば。彼の安全のために詳細は割愛するが、シリアで紛争が勃発し、彼は両親や兄弟を祖国に残してトルコに避難してきた。言葉も通じないトルコですぐには仕事も見つからず、若くして辛い経験や大変な苦労をしてきたが、いまは経済的に比較的安定した職に就いており、トルコにいるシリア難民の中ではかなり恵まれている立場にいると言える。

一方で、元々貧困状態にあったり、コロナにより職を失ったシリア人世帯の状況は深刻だ。収入が無くなってもトルコ政府からの経済援助は受けられず、マスクも買えず、家にいることしかできない。

トルコは、シリア難民の他イラクやアフガニスタンなどからも難民を受け入れ、約410万人の難民と庇護申請者を抱える。未曾有の事態に、これだけの人数を1カ国で対応するのは困難だ。アハメッドさんが勤務するNGOや国連を通じた各国からの国際協力が難民たちの望みの綱となっている。

今回、アハメッドさんに話を聞いたが、彼が話してくれたコロナによる飲食業界への影響、子どもたちとの在宅勤務の大変さ、通院への恐怖などは、日本でも多くの方が感じたことと同じではないだろうか。

私が難民支援の現場に入り、同年代のシリア出身者と知り合うようになって一番衝撃を受けたのが、彼らが「ごく普通の若者」だったことだ。一緒に食事をしてシーシャを吸い、恋愛や将来のことを話すうちに、「難民は可哀想」という偏見に凝り固まっていた自分に気がついた。そんな「普通」のシリア人が難民となり、550万人もがトルコなどの国外に逃げている。2011年に始まった内戦はいまも終わりが見えず、彼らはいつ自分の国に戻れるのかもかわからない状態だ。友人として、難民であることを理由にやりたいことを諦める姿を見るのはやるせないし、彼らが望む普通の生活を守りたいと思う。

日本は世界的に見ても難民の受け入れ数が少なく、難民への風当たりや偏見が強い。根拠のない偏見の裏には、外見や言葉、宗教、文化の違いから来る恐怖があるのではないか。でも彼らも私たちと同じ、家族がありそれぞれの人生がある、「普通」の子ども、若者、夫婦、老人だ。

6月20日の世界難民の日。コロナという大きな脅威を前に、ある意味全世界が一丸となって過ごしている今、どうかいま一度、難民問題をフラットな目で見つめ直してもらえたらと願う。

文=松本夏季

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