シリア難民の生活は新型コロナでどう変わった? トルコ現地レポート

トルコ南東部に暮らすシリア人、アハメッドさん(仮名)


シリア難民への3つの影響


アハメッドさんは筆者が仕事を通じて知り合った数年来の友人だ。約束の時間にオンライン通話をかけると、アハメッドさんは「連絡を受けてから自分でも整理してみたのですが、大きく分けると経済的・心理的・社会的な3つの影響があったと思います」と話してくれた。

──新型コロナウイルスによるシリア難民への経済的な影響はどの程度あったのでしょう?

トルコにいて仕事のあるシリア人の多くは、シリア料理を提供するレストランや、シーシャ(水タバコ)カフェなどで働いています。こうしたサービス業に就いていた人は、営業自粛の間にかなりの数が職を失ったり、収入が激減したりしています。もともとデリバリーサービスを行なっていた店はなんとか経営が続いているようですが、閉業した店も少なくありません。私はデスクワークなので遠隔勤務が可能でしたが、子どもたちのいる自宅での在宅勤務が続き、生活面でかなり大きな変化がありました。

──3月後半から6月初旬まで、トルコのほとんどの企業や団体が在宅勤務か休業状態だったようですね。また、65歳以上と18歳以下にはこの期間、政府が指定した数日の数時間のうち、ずっと外出禁止宣言が出ていました。アハメッドさんには小さいお子さんがいらっしゃいますよね。

2歳と3歳の男の子がいます。二つ目の心理的な影響については、子どもたちの方が大きかったかもしれません。小さな子どものいる親はわかると思いますが、公園や散歩で外出すると、外にいる間は子どもの機嫌が良いことが多いんです。今回は全然外出できなかったので、子どもたちのストレスがたまり、本当に大変でした。

──幼稚園などは利用できましたか?

長男はこの春から通う予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響で幼稚園が一時閉鎖になり、当面の間延期になりました。病院も連れて行くのが心配で、予防接種なども自分たちの判断で遅らせています。妻もずっと家にいてストレスが溜まったと思います。自分は毎日彼女の美味しい手料理を食べられて良かったのですが、とても太りました(笑)。

──ラマダン(イスラム教の断食月のこと)中のイフタール(日没後の断食明けの食事)は家族や友人と集まって盛大な食事をとることが多いですが、今年は様子が違ったのではないでしょうか。

そうですね。例年イフタールには友人や同僚を招くことが多かったのですが、今年は外出制限があったため、毎日家族だけで食事をとっていました。また、昨年までは断食明けのイード(断食月明けの祝日)の間はトルコからシリアへの国境が開き、故郷の家族の元へ里帰りができていたのですが、今年は叶いませんでした。7月末には2回目のイードがありますが、まだどうなるかわかりません。

──シリア国内の家族はどのように過ごされていますか?

シリアでは確認されている陽性者数はとても少ないんです(※筆者注:6月17日時点で187件)。トルコではこの数カ月間モスクでの礼拝が禁止されていましたが、シリアは地域によってはモスクでの礼拝も続いていました。自家用車での移動であれば特に外出制限もなかったそうです。私の家族のいる地域は、以前は戦闘が続いていましたが最近はだいぶ落ち着いているので、普段とあまり変わらない生活を送っているようです。
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文=松本夏季

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