アフターコロナに求められる「ブルーエコノミー」の回復 海洋観光から養殖まで

新型コロナは持続可能な海洋経済を築くきっかけとなるか(Getty Images)

規模が拡大しつつある海洋経済「ブルーエコノミー」も新型コロナウイルスの影響を受け、持続可能な形態へと変化することが求められています。世界経済フォーラムのアジェンダからご紹介します。


・新型コロナウイルスの影響は、陸だけでなく海にも及んでいます。
・今回のパンデミックは、未来に適した持続可能な海洋経済の構築をはじめる良い機会です。
・ここでは、政策立案者たちが考えるべき8つの分野を紹介します。

新型コロナウイルス感染拡大による危機は、世界経済のほぼすべての分野に影響を与えています。

航空会社、レストラン、スポーツなど、より身近な分野での混乱については多く語られていますが、新型コロナウイルスの影は海にまで伸び、「ブルーエコノミー」もその影響を受けています。公式および非公式の海洋の仕事、製品、サービスを合わせるとその規模は年間2.5兆ドルと見積もられており、海を仮に国と考えた場合の経済規模は世界で7番目となります。

海運活動は、新型コロナウイルスの影響で地域によっては30%減少。ロックダウン、そして海産品の需要減少により、中国や西アフリカでは漁業活動が80%も減っています。さらに、海とビーチの観光に依存していた国々までも国境を完全に閉鎖しています。世界的に、観光事業への新型コロナウイルスの影響は、74億ドルの損失、7500万人の失業リスクにまで膨れ上がれる可能性があります。

陸上をベースとする産業とコミュニティ回復のための景気刺激策の中には、より環境にやさしいあり方への躍進を目指すものもありますが、より海にやさしいあり方という視点はほとんど考慮されていません。しかしこれは、海や海岸に関しても同じ道へ舵を切るチャンスなのです。

新型コロナウイルスの大流行が収束した後に、より力強く持続可能な海洋経済を再構築するための8つの道のりを紹介します。

1. 海にやさしいブルーツーリズム


新型コロナウイルス感染拡大以前、海洋観光の直接の経済効果は3900億ドルとされ、多くの国でGDPの大部分を占めていました。パンデミックの中にあっても、海洋観光に依存し、健全な海によって利益を得ている何百万もの人たちを見捨てることはできません。復興資金を活用し、サンゴ礁やマングローブなどの沿岸生態系がブルーツーリズムにもたらす巨額の投資対効果を考慮し、沿岸生態系を回復させるために人を雇用することで、一時解雇を防ぐことができます。

大恐慌時代には、アメリカの市民保全部隊など、このような自然保護に基づく雇用創出プログラムが開発されました。景気刺激のための資金を使って、例えば、空き家になったホテルにプラスチック汚染削減のための飲料水ステーションや水処理システムを設置するなど、持続可能性向上のための活動で雇用を維持することもできます。また、持続可能性に関する知識や技能の多角化のため、従業員研修を行うという方法もあるでしょう。

ブルーツーリズム
世界では数百万人が海洋観光に依存している(Getty Images)
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文=Douglas McCauley、Kristian Teleki、Gloria Fluxà Thienemann

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