宇宙ゴミをレーザーで除去、スカパーJSATらが産官学共同で衛星を開発

宇宙ゴミを除去するための衛星のイメージ


今後スカパーJSATはプロジェクトに参加する各組織を取りまとめながら、サービスのデザイン、および衛星開発の全体を統括する。

衛星の基幹技術となる宇宙用レーザーの開発は理化学研究所と進めていく。両者は宇宙ゴミに推力を発生させるためのレーザーアブレーションの技術研究・開発をこれまでに共同で行ってきた。その成果を足がかりにして、2020年4月には理化学研究所内に融合的連携研究制度チームとして「衛星姿勢軌道制御用レーザー開発研究チーム」を正式に組織。名古屋大学と九州大学の参画を得て、レーザー搭載衛星の設計と開発にアクセルを踏んだばかりだ。

JAXAは本プロジェクトの初期段階から設計の検討に参加したとのこと。地上システムについても、JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)の枠組みを通じてサポートを続ける立場を取る。

プロジェクトリーダーの福島氏は現在のところ想定するビジネスモデルについて「まだ具体的には言えないが、衛星多数の同時運用による衛星コンステレーションシステムの事業者、あるいは各国の宇宙開発機関や政府組織に対して、開発の妨げになる宇宙ゴミを効率よく安全に除去できるサービスとして採用を促していきたい」と見解を述べている。事業化に際して法律面でクリアすべき課題については、「これから開発の方向が具体化してくれば検討すべき事項も増えると考えている。国内・国際の宇宙法の専門家の知恵を借りながら整備を進めたい」とした。

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地球を取り巻く宇宙空間には現在、1mm以上の宇宙ゴミが1億個以上浮遊していると言われている。人工衛星との衝突に伴って発生する故障やミッションへのダメージも懸念されている。

1957年に旧ソ連が人類初の無人人工衛星スプートニクを打ち上げて以来、人類は様々な衛星を宇宙空間に送り出してきた。国連宇宙部の調査によると、2020年4月までに宇宙空間に打ち上げられた物体数は9386機に及ぶという。

今後10年間にはメガコンステレーションシステムを含む大規模な衛星がさらに宇宙に送り出されることが予想される。衛星の渋滞による宇宙環境の悪化を不安視する声も高まりつつある。スカパーJSATでは当プロジェクトを推進する目的として、今後も持続可能な宇宙環境を維持しつつ、クリーンな宇宙と産業の発展に貢献することのプライオリティが非常に高いと説明している。

取材・文=山本 敦

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