ビジネス

2020.06.19

サイバーセキュリティクラウド大野暉社長が「人を信じる」理由と「3つの夢」

サイバーセキュリティクラウドの大野暉社長(写真=小田駿一)


仕事を任せられることで、成長できたから


しかし今、僕の社内における一番のテーマは「権限委譲」です。それはなぜか。

一つは、海外展開に力を入れているからです。現在、アマゾンのAWS向けの製品展開を強化しています。そこで僕自身がアメリカに「全張り」するためには、とにかく社員に仕事を任せて、自分の体を空けなければいけないからなのです。

それだけではありません。僕自身が高校時代、広告代理店やクライアント企業の方々から「やってみなはれ」の精神で、市場調査やマーケティングの仕事を任せていただいたことで、成長することができたからです。

社員には、その人の想定している実力の140%ぐらいの仕事をどんどん任せるようにしています。僕たちが自ら選んだ仲間なので、信じてとにかく任せてみる。成果の着地点としては、110%ぐらいに落ち着くのではないでしょうか。その人の現時点でのフルスペック以上の結果が出て、企業としての成長も早まります。

実は昔はあまり人を信じられなかったタイプなんです。この2年ぐらいでしょうか、「自分よりもこの領域においては仕事ができる」という人がどんどん現れてきたり、そういう人が意外と自分たちの仲間になってくれたりして、世の中捨てたもんじゃないな、と思うことがあったのです。

かつては究極のカッコつけだったんですけど、仲間がいてくれればカッコつける必要もなくなってきました。逆に言うと、自分の浅はかさが露呈されてきたのだと思います。

「深い思考」と「重い一手」


30歳を前にして、どんどん人としての素直さが出せるようになってきました。上場という経験を境に、思春期のような心境の変化がありました。

僕自身の働き方は、事業のフェーズによって全く違います。実務が多い時は本当に手を動かして実務に取り組みますし、「この時期は人に会う」と決めたら1日10人にお会いするような時もあります。やると決めたら「全振り」します。いろんなことをパラレルに、器用にこなすタイプではないですね。

最近は「深い思考」と「重い一手」を繰り返しています。一手一手がジャブのような連打ではなく、例えばどのような座組みでリリースを打つか、といった一手を慎重に考えて打たないといけないフェーズにあると思っています。そのための思考に最も時間を割いています。意思決定のタイミングで利害関係者に押し戻されないくらいの「重い一手」を打つために、最近はとにかく、いっぱい考えています。
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文=林亜季、写真=小田駿一

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