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「やりたいこと」や自我を潰してても


例えば買い替え等で大量に処分が必要になるPCやテレビなどの機器、鉄やプラスチックなどの資源。どんなゴミや資源が出るかのビッグデータを保持するため、システムを通じて事前にわかるのは大きなビジネスチャンスでもあった。事前情報により輸送の効率化ができるうえ、適切に処理するなかでアジア圏など必要としている場所への輸出も手がけた。

アプリやゲームを立ち上げてシードから資金調達を重ねIPOを目指す、そんな起業家たちが持て囃されていた。

「思い返せば当時、『やりたいこと』や自我を潰してても、『規模』を追求しようと燃えていました。エコのITをやっています、と標榜していましたが、正直一人の若者としては、当時あまり自分の仕事について詳しく言いたくはありませんでした」

逆張りの思考は、思い返せば自身の原体験でも養われていた。幼稚園の頃、いじめられっ子だったのをきっかけに、空手とバスケットボールを始めた。

バスケットボールでは成果が出なかったものの、空手では小学校から高校まで、全国優勝も含め、日本有数の選手に成長した。「バスケは競技人口が多く、空手は少なかったから勝つことができた。ある意味、ニッチだったのです。それで『逆張り』の思考にたどり着いたんです」。謙遜気味にこう振り返る。

廃棄物の分野にインターネット的な考え方を持ち込み、正当に処理価格を見える化したことで、ユニフェクトはどんどん成長したが、まだまだ業界には既得権益が渦巻いていた。

時代の関心はエネルギーとエコロジーに向いていた。2011年の東日本大震災後、孫正義氏が10億円程度の私財を投じ、自然エネルギーの利用について提言する財団法人を立ち上げると発表した。

「上場は難しい」大きな挫折経験


大学3年の頃だった。規模を追求する中で、上場という選択肢が見えてきた。年間1.8億円ぐらいの利益が出ていた。金融機関の担当者からは「最年少上場、いけるかもしれませんね」とも言われた。

しかし、ここで大きな挫折を経験することになる。

「この業態だと上場は難しい」。それが証券会社の結論だった。直接の取引がある会社はそうでなくても、もしかしたら知らないうちにどこかで反社会的勢力と関係のある会社や集団とかかわる可能性があるかもしれない、という理由だった。

規模を追求することで説得力を持つことができ、社会の役にも立つことができると信じて突き進んできた。しかし……。「『社会性』という言葉に深く考えさせられたんです」

貧しい生活にはもう戻りたくない。高校生にして莫大なお金を稼げるようになってからもコンプレックスは消えず、「飢え」が最も怖かったという。

高校時代から外食が当たり前だった。ご飯と味噌汁1品の寂しさの反動からか、外食すると食卓を彩るように、たくさん注文しすぎてしまうことがあるそうだ。

しかし大学4年にして上場を断念した頃には、学生社長としての贅沢な生活すらも飽き始めていた。

これ以上お金は要らない。「みんなが楽しい会社をつくってほしい」と言って、社長の籍だけ残したが報酬は取らず、他のメンバーに会社を任せることにした。

「規模」の追求だけじゃいけない。本当に世の中にインパクトのあることをするには「社会性」と「規模」の両立が必要だ。そのためには一回、社会勉強をしなければ──。

文=林亜季、写真=小田駿一

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