ビジネス

2020.06.18

生活の基盤はリアルからバーチャルへ なりたい自分で生きていく「Thirdverse構想」

(左から、伴、國光、新)


経済圏が生まれ、好きなことで生きていける「第二段階」


第二段階は2025年完成を目処に、人々が過ごす仮想世界で経済活動をできるようにしていきます。

ここで必須なのがブロックチェーンの技術。現実世界と仮想世界で同等の資産価値を測れるブロックチェーンを掛け合わせることで、仮想世界での経済活動は現実味を帯びてきます。

例えば、これまでであればゲーム上でいくらお金を稼いでも、リアルの世界では1円にも換金できませんでした。これまでのデジタルデータはいくらでもコピーができたので、そこに価値を持たせられないことが原因でした。ブロックチェーンはこのデジタルデータがコピーができないことが最も重要で、ビットコインもただのデータでしかないものの、コピーができないからこそ、それ自体に資産価値を持たせることができています。

これがVRゲームの中に入ってくるとどうなるかというと、例えばゲームの中で「家作りが上手で有名な人」が建てる家があるとします。それがもし限定1個だとしたら、お金を払ってでも欲しい人は出てきますよね。世界に一つしかないという価値が生まれるからです。モノの価値とは、需要と供給で決まるものです。コピーができる=供給が無限であれば、価値はゼロに等しくなりますが、供給が限られた本物には、本物である価値が生まれます。供給量を制限できるテクノロジーだからこそ、バーチャル上であっても素晴らしい建物や憧れの服、車や武器など、全てのものに価値をつけられるようになります。

「有名なアーティストが創った限定100着の服が欲しい」「伝説の武器職人が作った武器を買いたい」……こういった需要が生まれれば、それはもう一つの新しい経済圏です。

その先には、ゲームの中でのモノ作りが得意な人は、それを仮想世界で売ることができ、、現実世界でお金を稼ぐことが得意な人は、それをお金で買い需要と供給が満たされる世界が待っています。

資本主義の日本では、多くの労働者は、労働に対して賃金をもらうことが一般的です。稼ぎを増やしていくためには働く時間を増やしたり、スキルアップをして転職をしたりと、今自分が担う役割から努力を続けていかなければなりませんでした。しかしもし、VR空間上で自分のアバターが好きな職業を持ち、新しく稼ぐ手段を持つことができたら。現実世界ではまだ難しい「自分の好きなことでお金を稼ぐこと」も、可能になるかもしれません。

このように複数の外見、複数の性格、複数のコミュニティに複数の経済圏を自分で選んでいけるようになれば、人々はより自由に生きられるようになるはずです。これはそう遠くない未来の話で、今でもすでにこの兆候はあります。eSportsの世界ではゲームで莫大な賞金を手にする人がすでにいますし、YouTubeで人気のゲーム実況コンテンツは「ゲームをやっている姿を発信すること」でお金を稼いでいます。今はまだ、熟練した力を持つごくごく一部の人だけの話ですが、近い将来、ゲームの中で多くの人がお金を稼げる時代はやってきます。

これは、一生懸命勉強していい学校に入り、いい企業に入ってお金を稼ぐこととは違う、別の選択肢が生まれるということです。

これだけ変化の多い時代に、何が起きても変わらないことは2つあります。1日は平等に24時間だということと、人はいつか死ぬということです。

限られた時間の中で「不自由だと感じる現実の世界で生きる」のか、または「自分らしい自分でいれて、お金も稼げるバーチャルの世界で生きる」のか、どちらを選ぶかと問われたら、後者を選ぶ人が増えてくるはずです。そうなったときに、実際のお金をどう稼ぎ、どちらの世界に多く使うのか、価値観が大きく変わります。私は多くの人が、より多くのお金と可処分時間をバーチャル世界に使うようになってくると思います。バーチャル世界の経済は、これからより大きくなっていくのです。

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取材・執筆:柴田 佐世子 編集:柴山 由香 撮影:稲垣 純也

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