それは正義か。コロナ禍で再びあえぐ日本の「貧困」の現実

新宿・都庁前で緊急相談会を開く、もやい代表理事の大西蓮さん(左)

緊急事態宣言が解除され、街は日常を取り戻し始めているようだ。けれども、穏やかな生活を取り戻せない人も少なくない。総務省が発表した4月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は2.6%で、前月から0.1%上昇した。失業率がさらに悪化する見立てもあるが、現時点ですでに生活が立ち行かなくなっている人もいる。

日本の貧困問題を社会的に解決するために活動する認定NPO法人、自立生活サポートセンター・もやいの理事長・大西連さんに、コロナ禍での活動から見えた、日本の貧困対策の問題について聞いた。アフターコロナの社会像を考えるためにも、知っておくべき現代の日本の課題がここにある。


6月13日、土砂降りの大雨の日だった。大西さんは新宿・東京都庁前で生活困窮者を対象にした恒例の相談会を開くと、信じがたい事態が起きた。

もやいと共催している支援団体「新宿ごはんプラス」がいつものように食料品の配布を行おうとすると、都庁の警備担当者から都庁の敷地から出ていくように求められた。6年前から新宿ごはんプラスは同じ場所で活動を続けており、雨の日は敷地に入ることは黙認されていたという。だがこの日は突然、敷地に入ることを禁じられ、大雨の中、敷地外で並ばせるように指示されたのだ。

大西さんは人道的観点からその場で抗議すると「たしかに心苦しい点はあるんですけどこれはルールですから」と担当者は答える場面もあった。これにより集まった人たちは並ぶのではなく、自主的に間隔を空けて敷地内で雨宿りをして、予定時間内に200食を配り終えたという。新型コロナウイルスの影響で、食料品の配布や相談会を必要として集まる人たちは増えており、この日も160人以上の人が来ていた。


この抗議の様子を伝える動画は、ツイッターで1.8万以上リツイートされている。(6月17日現在)都庁の対応に批判の声も多くあり、この後、庁内管理をする担当者と大西さんらは話し合い、今後も予定通り活動を行うことになった。

過去最多の支援者数。新型コロナで困窮する2つのタイプの人たち


オンライン取材をした5月30日にも、大西さんは都庁前で新宿ごはんプラスと共催で「もやい緊急相談会」を開いていた。もやいは3月から、住居を失った人のためにオリンピック村の一部開放を求める「#ムラをあけて緊急署名キャンペーン」や、新型コロナで住まいや収入を失った人を支援するクラウドファンディングを行い、4月には事務所での週1回の臨時相談会に加えて、都庁前でも緊急相談会を開き、支援を求める人たちに対応していた。

この日の午後2時から4時までに、支援を求めて都庁前に集まったのは184人。これまで大西さんが活動をしていて過去最多の数だという。昨年の同時期は70人程度だったため、倍以上の人が集まったことになる。
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文=村山幸

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