検出システムの使い方はとてもシンプルだ。まず、テスト用の水溶液に農作物を浸す。次に検出キッドに含まれる専用の試験紙にその水溶液を塗る。最後に、試験紙の画像をスマートフォンで撮影しアップロードすると、数分後に結果が通知されるという流れである。
お茶、果物、野菜などさまざまな農作物の検査ができるのだが、通知される結果には農薬名と残留物の含有量が細かく示されるという。なお、中国で認可されている農薬の数はおよそ500種類だと言われているが、研究チームは主要な薬品をデータベース化して検出可能にした。
中国ではこれまで食の安全を脅かす残留農薬が社会的課題となってきたが、農薬の種類は多種多様なため、迅速かつ効率的な検査方法が確立されてこなかった。研究チームは長年の研究を経て同技術を公表するにいたったのだが、特筆すべきは専門家でない一般消費者や市場関係者でも簡単に技術を使いこなせる点だ。
検出システムはメッセンジャーアプリ「WeChat」と連動しており、検出キッドだけ揃えれば写真をアップロードするだけでいつでも・どこでも判定を行うことができる。中国国内では、「政府による監督」「生産者の自己検査」「市場における品質管理」「消費者による利用」など、さまざまな用途に応用できると注目が集まっている。
将来的に、農薬の残留量だけではく、違法添加物、環境汚染物、または昨今世界中で問題となっているウィルスの検出にも利用シーンを拡張できるとされている。
日本の場合、日本農薬が病害虫や雑草を撮影することで、防除対策に有効な農薬を提案するAIを開発している。今後、該当する農薬を購入できる販売店を知らせる機能も拡充していくという。またオプティムなどは、ドローンで撮影した画像をもとに、ピンポイントで農薬散布すべき箇所、もしくは「農薬散布をしなくてもよい箇所」を提案するソリューションを展開している。
日中の研究機関や企業は、農薬というテーマに対して一様にAIを取り入れ始めているが、課題設定の違いから新たに生まれたシステムの性質も異なっているようだ。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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