ビジネス

2020.06.21

利用が増える「海洋ごみリサイクル繊維」、一部には批判的指摘も

Vstock LLC/Getty Images


サステナビリティ専門家の評価は


では、サステナビリティ分野の専門家は、海洋ごみの削減に乗り出したブランドをどう評価しているのだろうか。

ファッションビジネスを専門とするビジネススクール、LIMカレッジの助教授アンドレア・ケネディ(Andrea Kennedy)は、まずはリサイクルされているプラスチックの種類を明確にすることが重要だと指摘する。繊維製品に使われるプラスチックは、実は海洋を漂流しているものではなく、海岸で回収されたものがほとんどだというのだ。

塩分を含む水に長い間浸かっていたプラスチックは、非常にもろくなるため、粉砕して繊維として再利用するのは難しい。

「ゆえに、最終的な目標は、私たちの大切な海洋に多くのプラスチックが流入し、細かなごみに分解されてしまう状態を食い止めることであるべきだ。とはいえ、海岸でごみ拾いをして、浜に打ち上げられたプラスチックを回収することは、最初のステップではある」とケネディ准教授は述べ、こう続けた。「一般論として言えば、海から回収したプラスチックを利用してアパレル製品向け合成繊維を製造するほうが、一から合成繊維を製造するよりもずっと環境に良い。こうした繊維は、石油から作られているからだ」

一方、ファッション産業が環境に与える影響を取材しているジャーナリストのジャスミン・チュア(Jasmin Chua)は、海から回収したプラスチックをリサイクルして使うのは良い考えだとしながらも、マーケティングの手段としてこうしたプラスチック素材を使用するブランドに対しては、批判的な目で疑問を提起する必要があると指摘する。なぜなら、たとえリサイクルされた繊維であっても、プラスチック素材からは細かい繊維くずが発生し、最終的には再び海を汚すからだ。

「海洋に流出したプラスチック(のリサイクル)は、完璧な解決法ではない。やはり、全体のプラスチック消費量を減らすことが、私たちにとってベストな方法だ」と、チュアは結論づけた。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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