ホーグ病院でVR療法を導入しようとしていた矢先に、新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、ルイスたちは後退を余儀なくされた。結局、ヘッドセットを購入し、すでに入院していて、新型コロナウイルスに感染していない患者で使用を始めることにした。
「見舞い客を断わるようになった結果、多くの患者はひとりきりでじっとしていた」とルイスは言う。「(VRを使えば、)病室でひとりきりでいる患者に対して、ボラボラ島への海外旅行や、イルカと一緒に泳いだりする機会を与えることができる。気晴らしになるし、気持ちも落ちつく」
病院の経営者は、パンデミックの影響で自宅待機になっていた看護師たちに依頼し、患者がVRを使って痛みを和らげるのを補助する8人編成のチームを組織した。過去6週間で、チームは200人ほどの患者を治療した。ルイスによれば、驚くほどの結果が出ているという。
「患者のなかには、『モルヒネよりも痛みが和らぐ』と言った人もいる」とルイスは話している。
医療現場におけるその他のVRの用途
ルイスはいま、患者が体験するあらゆる側面を網羅する新技術の配備、研究、開発という3分野に積極的に取り組んでいるという。
また、米食品医薬品局(FDA)の共同委員会に参加し、VRで急性および慢性の痛みを治療するためのガイドラインを策定している。現在は、今秋に予定される大きなイベントの計画を練っている。
「10月10日に、VRと医療に関するカンファレンスを開催する予定だ」とルイスは話している。「世界中から、VRによる痛みの治療に関する著名な専門家を招くつもりだ」