では、数多ある作品のなかから自分が観たいものを選ぶとき、皆さんはどんなことを基準にしているだろうか。「内容に惹かれて」「ジャケ買い」「キャストが好き」など理由はさまざまだと思うが、「タイトルの力」も大きいのではないだろうか。
そんな海外作品の邦題がどんなふうに決められているのか、配給会社であるビターズ・エンドの作品を中心に、お伝えしよう。
原題を生かした邦題の付け方
海外作品の邦題は、ほとんど日本の配給会社で決めている。配給会社が作品を買いつけたときには、もちろん日本での公開タイトルは決まっていない。原題もしくはインターナショナルタイトルが決まっているくらいだ。
一般的に作品を買いつけると、特に観て欲しい客層(ターゲット)を想定しながら、まずは公開する劇場を探して決める。そして、邦題はそのターゲットに届きやすいようなものを考えていく。
私たちが邦題を考えるときに大切にしているのは、原題を極力生かすという大前提のもと、「キャッチーであること」「覚えやすいこと」「他と差別化ができること」「作品の特徴を端的に表すこと」という点だ。これはすべての商品のネーミングと共通することだろう。
場合によっては、監督や製作会社が「このタイトル以外は認めない」と最初から断りが入っていて、一切変えられない場合もあるが、多くは公開する国のタイトルは、その国の配給会社が主となって決めることができる。
海外作品の邦題の付け方には、2つの大きなパターンがある。ひとつは原題を生かしたもの、もうひとつは反対に原題からはかけ離れたものだ。
原題を生かした邦題のパターンを、ビターズ・エンドがずっと配給してきたベルギーのダルデンヌ兄弟の監督作品を例にとって見てみよう。「La Promesse(約束)」(1996年)は「イゴールの約束」、「Le Fils(息子)」(2002年)は「息子のまなざし」、「Deux jours, une neuf(2つの昼と1つの夜)」(2014年)は「サンドラの週末」という邦題になっている。
これらは原題を生かしながらも、日本独自のニュアンスを加えたものだ。原題に主人公の名前や「まなざし」などの言葉を入れることによって、そのままだと漠然としすぎる原題のストーリーや内容をイメージしやすくしている。
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3つ目の「サンドラの週末」は一見原題とはかけ離れているように見えるかもしれないが、これは言葉を言い換えたもの。「2つの昼と1つの夜」は劇中で土曜日から日曜日のことを指しているので、「週末」とした。こうすることで、より具体的になっている。