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菅原俊子 ハート・オーガナイゼーション代表取締役

世界中の医師同士のネットワークを構築し、オンライン上で学会や研究会、情報共有ができるサービス「e-casebook LIVE」を提供する大阪のベンチャー企業、ハート・オーガナイゼーション。医療現場が逼迫するいま、医師をサポートするサービス事業者として、コロナ禍にどう対峙しているのか。創業者、菅原俊子に聞く。


新型コロナウイルスの影響で、医療業界では以前の事業環境で当たり前だったことが明らかに覆され、大きな転換期を迎えていると感じています。世界中で予定されていた研究発表の場である学会や、臨床経験の共有の場である研究会が開催されなくなり、医師たちは必要な情報の収集が止まっている状況にあるのです。

そんななかで「e-casebook LIVE」のユーザーの先生方から、「どんな状況でも教育や、情報共有の場が継続できることが重要」と多くの声をいただき、サービスを続けてサポートしていくことが大事だと痛感させられました。

原点に立ち返れば、私たちが物理的な学会や研究会の運営からオンライン化に舵を切ったのも、東日本大震災がきっかけ。有事を前提とした、教育や情報共有のインフラが、いま必要とされているのです。

実際、これまでの中心的なユーザーである循環器内科、整形外科だけでなく、がん領域、脊椎脊髄、眼科、小児科などさまざまな診療科の先生、また医療機器メーカー、製薬会社からの問い合わせが急増しています。

そこで、病院のカテーテル室、手術室からのライブ配信はサービスを停止しつつも、ウェブ上だけで学会、研究会、シンポジウムなどが開催できる新サービスをリリースしました。提供対象の診療科をできる限り広げて開催を続け、5月1日現在、「e-casebook LIVE」のアクティブユーザー数は、今年1月に比べて43%増えています。

新型コロナウイルスについては、まさに戦いの最中にあり、治療法も暗中模索の状況が続いているため臨床経験も蓄積されず、「e-casebook LIVE」上でも、関連した研究会はまだないのが実情です。しかし、医療現場で求められているのは感染症対策だけではありません。この状況下でも、さまざまな領域で新しい研究の成果があり、それに伴う医療機器や医薬品は開発されていて、この春に多くの発表会があるはずでした。

新しい医療技術が生まれれば、医師の治療戦略は変わります。こうした医療を前に進める活動は、臨床の現場に直接反映されるもの。先生方は常に患者さんにいい診断や治療を提供したいと思っていて、その活動は絶対に止めてはいけないんです。


すがわら・としこ◎大阪府出身。関西学院大学総合政策学部卒業。関西学院大学専門職大学院経営管理修士修了。外資系製薬会社マーケティング本部での経験を経て、2000年にハート・オーガナイゼーションを創業。04年に法人化し、代表取締役に就任。

文=眞鍋 武 写真=佐々木 康

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