ビジネス

2020.06.20

大学中退の23歳が率いるクラウド倉庫企業「Stord」の野望

ショーン・ヘンリー(左)とジェイコブ・ブードロー(右)/ stord.com

米国が新型コロナウイルスの感染拡大を受け、シャットダウンを開始した3月中旬に、23歳のスタートアップ起業家のショーン・ヘンリーは初めての買収話をまとめようとしていた。

ヘンリーが創業したクラウドベースの倉庫プラットフォーム「Stord」は数カ月に及んだ、物流企業「Cove Logistics」の買収に向けた協議の最終段階を迎えていた。

アトランタに本拠を置くStordのCEOを務めるヘンリーは、「市場を取り巻く状況は、僕らが今回の決定を下した数カ月前とは異なるものになった。マクロレベルではある種の不確実性が漂っている」と話す。

ヘンリーは2018年のフォーブスの「30アンダー30」に共同創業者のジェイコブ・ブードローと共に選ばれていた。「けれども、当社の顧客の伸びを考慮に入れると買収計画を前に進めるしかないと判断した」

Stordは6月12日、ミズーリ州本拠のCove Logisticsを約1000万ドル(約10億円)で買収すると発表した。Stordはミズーリ州のスプリングフィールドにオフィスを新設し、Coveの15人の社員全員はそこで働くことになる。これまで1500万ドルの資金をKleiner PerkinsやRevolutionなどのベンチャーキャピタルから調達したStordは、全米4箇所のオフィスで85人を雇用している。

ヘンリーは、まだジョージア工科大学の学生だった2015年にStordを共同創業した。その後、1回目の資金調達を完了した2018年に彼は大学をドロップアウトして、ピーター・ティールが設立した若手起業家育成プログラムThiel Fellowのメンバーとなり、フルタイムで会社に関わるようになった。

Stordの初期のビジネスモデルは、自社では倉庫を持たず、ソフトウェアで消費者向けプロダクトの企業と、独立系の倉庫の空きスペースをつなぐものだった。同社は、Dollar GeneralやAdvance Auto Partsなどの企業顧客に、倉庫の維持に必要なコスト負担を避けつつ、高度にローカライズされた物流センターを提供していた。

その後、Stordは事業の拡大には自社の輸送ネットワークの整備が不可欠であることに気づいた。同社の顧客の大半は、B2Bビジネスのために倉庫を利用しており、貯蔵したアイテムを物流トラックで出し入れする必要があったのだ。

同社の試算では、輸送を外部企業に依頼することで12億ドルが無駄に使われていたという。2019年の後半に、Stordは自社で物流部門を構築しようとしたが、断念した。そして買収候補にあがったのが、100社の企業顧客を抱え、99%の精度で時間通りの輸送を実現していたCoveだった。

「今回の買収は、Stordが長期的視野で投資を行ない、企業向けにクラウドベースの物流ネットワークを提供する姿勢を示している。当社の顧客は、迅速で確実な配達を実現し、アマゾンに対抗しようとしている大手ブランドだ」とヘンリーは話した。

編集=上田裕資

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