しかし先日、米宇宙企業のスペースXがロケットのファルコン9とクルードラゴンのカプセルをケネディー宇宙センターから打ち上げたとき、それもついに変化した。
今回の打ち上げでは、宇宙飛行士を軌道へと運ぶために民間で設計・構築された初の宇宙船が使用され、スペースシャトルの終了とともに失われた重要な能力の復活となった。それを受け、今回の打ち上げは米国の宇宙飛行の新たな時代の幕開けと称された。乗組員のロバート・ベンケンとダグ・ハーレーの2人は5月31日に軌道に到達し、国際宇宙ステーション(ISS)と無事ドッキングした。
スペースXのロケット打ち上げ成功が顕著な出来事である理由には、NASAが宇宙飛行士を軌道に送る上でロシアに依存しなくてよくなったこと以外にも要因がある。それはコストだ。
NASAは新たな宇宙船開発のため、「コマーシャルクルー計画(商業乗員輸送計画)」と呼ばれるプログラムで、スペースXやボーイングとそれぞれ約31億ドル(約3300億円)と約48億ドル(約5200億円)の価値のある契約を結んでいる。これは、過去60年近くの宇宙飛行開発の取り組みの中で、最も安いものだ。2019年11月に行われたNASAの監査では、宇宙飛行士1人の席にかかる費用はそれまでのプログラムやソユーズよりも顕著に安いことが分かっている。
米非営利団体(NPO)のプラネタリー・ソサエティー(Planetary Society)の調査によると、インフレーションの調整後、アポロ計画の宇宙飛行士1席分のコストは約3億9000万ドル(約420億円)だったのに対し、スペースシャトルのコストは約1億7000万ドル(約180億円)だった。
NASAの監査によると、スペースXのクルードラゴンの1席当たりのコストは推定約5500万ドル(約60億円)で、ボーイングのスターライナーの1席当たりのコストは約9000万ドル(約100億円)だ。これらは、米国の納税者にとって損な契約ではない。
スペースXのクルードラゴンは、NASAが最近のソユーズの一連の打ち上げのため、ロシアに2017年以降支払った額よりも顕著に安い。ソユーズの場合、契約された宇宙飛行の数は12回で、1席当たりのコストはおよそ7970万ドル(約86億円)となる計算だ。