シカゴ大学の研究機関NORCが行ったアンケート調査では、米疾病対策センター(CDC)の勧告に従ってマスクを着用していると答えた米国人の割合は4月の78%から現在では90%に増加した。人々の見解はおおむね一致しているように思えるが、マスク着用はそれでも人々を分断させる問題となっている。
例えば、アリゾナ州では1日の新規感染者数が5月頭から3倍に急増しているが、ダグ・デュシー知事は公共の場でのマスク着用を義務化する措置を取っていない。カリフォルニア州オレンジ郡では感染者数が増加しているにもかかわらず、当局は12日、住民の反発を受けてマスク着用命令を解除した。
一方、ニューヨーク州では、4月の流行ピーク時にソーシャルディスタンシングが不可能な場所でのマスク着用を義務化。他の複数の州でも同様の措置が取られた。
マスクの政治問題化の背景に、政府による規制への抵抗がある。マスク着用について当初から疑念を抱いていた人々は、当局からの厳格な命令に反発し、態度を硬化させてしまうのだ。
アメリカン大学ワシントン法科大学院のリンジー・ワイリー教授(公衆衛生法・倫理)は先月、NPRに対し、マスク着用に懐疑的な人々は強制されることによって「意固地になる」と説明。これによって、「マスク着用の拒否で連想される『自分は自由を愛し、賢くて公衆衛生指針に懐疑的なのだ』というポジティブな感覚が強化される」と指摘した。
マスクは政治的な問題となっている。共和党のミッチ・マコネル院内総務は先月、公共の場でのマスク着用への支持を表明したが、一方でドナルド・トランプ大統領を含む他の共和党指導部はマスクを弱さの証としてみてきた。
トランプは先月、ミシガン州にあるフォードの工場を視察した際、マスク着用を拒否して物議を醸した。民主党のナンシー・ペロシ下院議長は今月、マスク着用を支持し、「真の男はマスクを着ける」と語った。