ビジネス

2020.06.15

自社での失敗を経て、協業の道へ。開発不要でネットスーパーができるサービスの開発秘話


食品をチャネルに、大きな産業を目指す


冒頭のとおり「DX」という言葉が世間を賑わせている。矢本は今後、食品流通市場をどのようにDXしたいと考えているのか?

「DXをやりたくて会社をやってきたわけじゃないんです。結果的にDXの波が来たと言いいますか……(笑)。でも、これは不可逆な流れだと思っています。新型コロナウイルスのような事態が今後も起こる可能性を考えると、食品や日用品をデジタルで購入し、非接触で完結できるようなインフラを守り育てることに大義があると考えています。デジタルな小売、デジタルな購買手段を社会にとってあたりまえの選択肢にすることが、僕らのやるべきことだと考えているんです。僕らはスーパーというレイヤーから入っていますが、類似した日用品のマーケットには、コンビニやドラッグストアなどもあります。今、そのチャネルをどうDXしていくかについても、議論をすすめているところです」(矢本)

日本のスーパーマーケット市場は13兆円規模、およそ2万店舗がひしめきあう。そのうち、ネットスーパーを提供しているのは約4%しかいないという。



「だからこそ、残りの約96%がすぐにネットスーパーを始められるようなプラットフォームをつくりたい。そして、スーパーに限らない食品流通市場もDXにするようなことを地続きでやりたいんです。Stailerでもサプライチェーンの全体に適応していくためのソフトウェアの拡張を準備しています」(矢本)

「ゆくゆくは、食品の先にある大きな産業を目指したい」と、話を続ける矢本。

「大手ショッピングモールやコンビニにお客さんが来るのは、1日3回必ず口に入る食品をおさえているから。そこをチャネルに、例えばATMでお金を降ろしたり、おもちゃや保険商品など多様な商材へお客様をつないでワンストップで課題を解決する流れができている。僕らも、食品のチャネルをおさえたうえで、横にある別のインダストリーに入っていきたい。これは数十年単位でかかるかもしれませんが……(笑)。とはいえ、10Xとしては引き続きエンドユーザーのために、デジタルで非連続な体験を提供することに集中できればと思っています。小売のDXはそのための手段と考えています」(矢本)

文=福岡夏樹

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