初代ロードスターは、全世界的に小型オープンカーのブームに火をつけ、セルシオはドイツ勢の高級車メーカーに新時代の質感、信頼性、静粛性のあり方を教えた。そして、90年に登場した初代NSXは、フェラーリなどのスーパーカーづくりの概念まで変えさせた。
今回は世界を変えた3台の日本の名車を振り返ってみよう。まずは、ロードスターから。
マツダが欧州のライバルに火をつけた
ロードスターは、1962年に生まれたロータス・エランからインスピレーションを受けていたが、そのルックス、走り、信頼性、完成度、コスト・パフォーマンスで、はるかにエランを超え、多くのカーメーカーに影響を及ぼした。
当時、世界の有力媒体も絶賛。雑誌「カー&ドライバー」は、「1000kgほどのライトウェイトな車重であること、1.6リッターの4気筒エンジンと5速MTから来る走りの楽しさ、そして後輪駆動という人馬一体のパッケージングは傑作!」と紹介していた。
90年代に登場した欧州のライバルたちを見てみると、その全てはロードスターにインスパイアされて、できる限り軽量化を図り、信頼性とファン・トゥ・ドライブを重視した。ポルシェ・ボクスター、メルセデスベンツSLK、BMW Z3、アウディTTなどは、ロードスターの大成功の影響を受けて誕生した。
2016年に4代目のロードスターが世界最優秀車賞「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得した時には、累積販売台数は100万台に近づいていた。
セルシオが見せつけた「本当の高級感」
トヨタ・セルシオ
僕は、1989年にトヨタ・セルシオがアメリカでアンヴェールされた時のことが忘れられない。その年、アメリカでトヨタの高級ブランドであるレクサスが発表され、その代表的な車種が、セルシオことレクサスLSだった。
現地のメディアは驚きを隠せなかった。「4万ドルの日本車? からかってるんじゃないの?」「そんな価値はあるのか?」と、誰もが言ってた。当時、トヨタは信頼性の高い大衆車としか思われていなかったからだ。だからこそ、セルシオ(=レクサスLS400)登場のニュースで伝えられたその特徴が、アメリカ人にとっては衝撃だった。
例えば、「あまりに静かで、エンジンが回ってないみたいだ」とか、「BMWより速くて、ベンツより贅沢で、しかも、どちらよりも安い!」とか、「しかもトヨタってことは、壊れないわけだ!」とか、メディアの反応はとってもポジティブだった。
抜群の静粛性と完成度の高いV型8気筒エンジンが、北米マーケットを圧倒した。LS400の静謐な書斎のような室内。それは、存在感を見せつける高級車とは一線を画して、日本流の「おもてなし」の心を体現していた。