欧米のクルマ作りを激変させた日本の名車3台

マツダ・初代ロードスター


あるジャーナリストは、1989年8月の試乗記にこう書いた。「恐れを知らないレクサスは、よりにもよってライバルが居並ぶドイツのアウトバーンでそのデビューを飾った。BMW 735i、メルセデス420SE、それにジャガーXJ6という、錚々たるライバルたち。しかし、レクサスはそれらを超えていた」と。

そして、「LS400には、『あっと息が止まるほど』と言う形容が相応しい」と評し、「ヨーロッパのカーメーカーの重役達は、いまハラハラしているだろ」とも記していた。

初代NSXがフェラーリに与えた衝撃


その翌年に生まれた初代ホンダNSXは、ロードスターやセルシオと同様の衝撃で、世界のクルマ作りに大きなインパクトを与えたと言うことができる。

1990年に、アメリカのどの自動車雑誌をも賑わわせたのは、ホンダが作ったミドシップのスポーツカーのリポートだった。アメリカで「アキューラ」と呼ばれる高級ブランドのそのモデルは、もし、発表前のリポートが本当なら、「ヨーロッパで最高のスポーツカーに戦いを挑むほどのレベル。しかも、価格は安いらしいぞ!」と、話題騒然だった。


初代ホンダNSX

当時のホンダの川本伸彦社長は、「最新のフェラーリなんて、化石同然だ」と豪語していた。ホンダがNSXに搭載した世界初のテクノロジーは、なんと20以上。オール・アルミ・モノコック、4チャンネルABSブレーキ、エレクトリック・パワーステアリングも世界で初めて量産モデルに本格的に搭載した。VTEC可変バルブ・タイミング・システムを最初に採用したクルマでもあった。

1990年頃、高級スポーツカーのベンチマークとなっていたのはフェラーリ328だった。NSXの開発チームは、328を何台も購入して研究したという。そして誕生したNSXは、328の走り、安定性、質感、そして信頼性をも完全に超えていた。ホンダは、NSXを出すことによって、“毎日乗れるスーパーカー”が作れることを証明した。

NSXに影響されて、フェラーリはすぐさま328の後継車をデザインし直した。やがて1999年に登場したフェラーリ360は、ケタ違いの性能とハンドリングを実現していた。それはホンダが突きつけたNSXという挑戦状のおかげに他ならないだろう。

発売時にNSXを試乗したあるアメリカ人ジャーナリストは、「世界が初めて生みだした、最高のスポーツカーだ。これまでどこにもない、どんな価格でも作れなかった。NSXこそは、1955年のSLガルウィングも、1977年のポルシェ928も超越してる。どのフェラーリより、どのランボルギーニよりも優れた人類史上の最高傑作だ」と讃えた。

それはおそらく、クルマ中心に作られたスポーツカーではなく、ドライバーが運転しやすい、「人間中心」に作られた初めてのスポーツカーだったからだろう。

さて、ここ数年の間にロードスター、レクサスLS、NSXも新型が誕生し、それらももちろん優れていているが、欧米や韓国の自動車づくりも非常に進化している。30年前に日本車が世界に与えた衝撃は、もう2度と来ないだろう。それに、時代が「スポーツカーを作る」というマインドを支持するかどうかも危うい。ただ、移動手段としてのクルマとは別に、楽しくドライブするという文化は、環境と人に負荷をかけない方向を極めれば、進化し続けると信じたい。

連載:国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
「ライオンのひと吠え」過去記事はこちら>>

文=ピーター・ライオン

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