ビジネス

2020.06.17

「使命感が9割です」 ガーナに30億円の投資を決めた日本人起業家の気概

ガーナのアクフォアド大統領(右)に面会したDegas CEOの牧浦氏(左)

新型コロナウイルス感染拡大のなかでヒットした、次の2つの商品の共通点をご存知だろうか。

ひとつは「昆虫サインモノグラムマスク」。香川照之氏がプロデュースする昆虫モチーフのアパレルブランド「インセクトコレクション」が5月22日に緊急発売した子ども用マスクだ。即完売するほどの人気で、6月下旬に再販も決まった。収益はすべて、アフリカで感染症対策を行うNPO団体「Project MAJI」に寄付されるという。

もう1つは、下の写真にある「Social Distancing」Tシャツ。背中側には「すいません。2メートル離れてください。┌○ペコリ」と書かれている。4月初旬に発売され、瞬く間に約1000枚を売り切った。こちらも収益は国際協力NGO「ピースウィンズ・ジャパン」に寄付される予定だ。

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「Social Distancing」Tシャツ

この「Social Distancing」Tシャツは、元AKB48で女優の大島優子氏や乙武洋匡氏など、多くの著名人が着用し、その様子をSNS上に投稿したことでも話題を呼んだ。

これらのヒット商品、実はいずれも1人の若者がかかわっている。牧浦土雅(まきうら・どが)、26歳。ガーナを拠点に、サブサハラ・アフリカの小規模農家の支援を手がける農業商社Degas(デガス)のCEOだ。昆虫マスクでは香川氏サイドから依頼を受けて寄付先を選定し、Tシャツは企画からデザイン、販売までほぼ1人で手掛けたという。

その行動力には定評がある。既にガーナ北部だけで3000以上の農家と取り引きし、ナイジェリアでも一部事業を始めた。2019年に横浜で開催されたアフリカ開発会議(TICAD)のときには、ガーナのアクフォアド大統領に「今後3年間で30億円超の投資を行う」との意向を示す表明書を手渡して注目を集めた。

東南アジアをはじめ世界各国でIT関連事業を手掛けた後、2018年からガーナで農業ビジネスに従事する牧浦は、世界を渡り歩く、次世代の期待の星。そんな彼が手がける事業とくれば、テクノロジー満載に違いないと思いきや、意外にも「ひたすら泥臭い」(牧浦)と言い切る。

そこには、現地でビジネスをする者にしかわからないアフリカの現状と、「今できることを愚直にやるのが、貧困をなくす一番の近道だ」という強い信念があった。
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文=瀬戸久美子

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