プロ野球は6月19日に、Jリーグは7月4日の開幕を目指しているが、当初は無観客試合よりスタート。春の選抜出場予定32校を集めた交流試合が8月に甲子園で行われるが、これも関係者、保護者のみとなり、おおむね無観客となる予定だ。そこで、Jリーグの村井満チェアマンは7月10日以降の開催試合において「十分な感染拡大阻止の準備をした上で」という前置きながら、5000人もしくは50%の入場を意図している。
こうした方針を具現化するには、スタジアムの混雑緩和が重要命題となることは必至だ。スーパーのレジでさえ1メートルの距離をおいて並ぶ日常生活にある中、スタジアムの入場時はすし詰め……という状況がスタジアムに限っては容認されるかというと、非現実的だ。ひと度、スタジアムで感染が拡大されれば、再開されたすべてのスポーツにその余波が広がることは想像に固くない。
チケット販売においても、グループは連番のシートを許容されるだろうが、見知らぬ観客とはひと席もしくはふた席距離をおいての動員となると予想される。これまでのようにフラッグを振り上げ、大声でチャントするなどの応援スタイルは、控えざるを得ないだろう。
AIカメラで混雑状況を監視
こうした混雑のすべてを警備員やアルバイト、ボランティアなどの人海戦術で監視するには限界がある。そんな時こそAIカメラを用いて監視、アラートを無視する観客は退場を促すなどのソリューションを想定する必要がある。また、売店やトイレの混雑状況の監視も課題だ。現在、銀行の窓口でさえ、店舗の外まで列を成すような間隔を保つようにされているという世の中で、売店に観客が殺到するような状況が、世間から容認されるとは想定しにくい。
もちろんJリーグは対応策を検討しているだろう。だが、医療専門家が「ソーシャルディスタンシングは2022年までは続く」と発言していることからも、スポーツのLIVE観戦になんらかの制限が続くことは間違い。人海戦術とは異なるスマート・ソリューションの導入が求められる。
「一朝一夕にそんな対応は不可能だ」と断言するのは尚早だ。NECは11日、既設の監視カメラ映像から、リアルタイムでソーシャルディスタンスを割り出し、守られていない場合にスマホはデジタル・サイネージにアラートを発する技術を発表。既存の機材を置き換えることなく、課題解決の可能性を提示してみせた。こうした新技術の導入は、来年の五輪開催に向けても急がれるべきだろう。
東京オリンピック・パラリンピック開催会場の通信インフラは、NTTグループが担当している。この裏には、もともと2020にて活用される会場をスマート化するという構想が隠されていた。5Gによる強固な大容量通信網が敷設されたスタジアムが完成するなら、スマート化を容易にするはずだ。
アメリカで最大のスポーツイベント・NFL「スーパーボウル」のスタジアムでは今年、26.42テラバイトの通信が実行された。これは2019年の同大会と比較し9.9%増と発表され、アメリカではひと足先に5Gが導入されているからこそ、達成された数値として評価されている。2021年、本当に東京五輪が開催されるのであれば、こうした大容量通信に耐えうるインフラを備えた会場が必要だ。