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日本はどうか?


日本では、学校が休校になった以外は、スウェーデンと似た政策であったと思われるが、感染者、死亡者は格段に少ない。日本人の優れた衛生観念などが有利に働いたという説明もあるが、人口比で死亡者数を見ると、東アジア諸国では日本同様に低い値であることから(図9:ourworldindata.orgのデータより筆者作成)、それだけで低い死亡者数を説明することは難しい。

今回の新型コロナウイルス感染で得られる獲得免疫以外の免疫機構、例えば、他のコロナウイルス感染やBCG東京株接種による交差免疫、また、遺伝子や環境などのバックグラウンドの違いなど、まだわかっていない要素があり、それらが日本を含む東アジア諸国に有利に働いたのではないかと思っている。


図9:ourworldindata.orgのデータより

また、スウェーデンの新型コロナウイルス感染の高い死亡者数は、現時点では、ここで述べたようなスウェーデンの福祉の欠陥をつかれたものと考えられ、ロックダウンしなかったことが失敗であると結論づけることはできない。各国それぞれ異なった事情があり、統計の手法も異なる中で、感染症対策にも一つの正解がある訳ではないと思う。まだパンデミックは収束しておらず、今後の経過から目が離せない。

スウェーデンの最新データ状況は



図10:www.folkhalsomyndigheten.se

本稿を執筆中、スウェーデンでの新感染者が増加したことにより、「スウェーデンのロックダウンしない政策は失敗だった」と言う報道に加速がかかった。本稿の最後に、新感染者が増加した背景をのべる。これは、スウェーデンにおけるPCR検査のキャパシティーが増え、重症者が減少したため、より多くの医療従事者の検査を始めたこと、また、今までは検査の対象とならなかった、入院を必要としない軽症の患者全例に、診療所(家庭医)で検査を行うことになったため、検査数が増加したことによる。

図10で(www.folkhalsomyndigheten.se)わかるように、第23週に診療所で診断された感染者数が急激に増加しているが、図11(www.aftonbladet.se)で示すように、入院者数やICU治療が必要な重症者数は増加していない。

また、スウェーデン以外のEU諸国の第一四半期のGDPがマイナス成長しているのに対し、スウェーデンの第一四半期のGDPはプラス成長しており(図12:Reuters Graphicsより)、経済に対する影響が比較的軽微であることを付け加えておく。



図11:www.aftonbladet.seより




図12:Reuters Graphicsより

なおストックホルムでは、6月15日から全ての住民がCOVID-19のPCR検査と抗体検査が無料でできることになった。このことで、さらに感染者数が増えて世界中から批判が高まるに違いない。


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宮川絢子(みやかわあやこ)◎スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務。平成元年慶應義塾大学医学部卒業。日本泌尿器科学会専門医、スウェーデン泌尿器科専門医、医学博士、カロリンスカ大学およびケンブリッジ大学でポスドク。2007年スウェーデン移住。スウェーデン人の夫との間に男女の双子がいる。

文=宮川絢子

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