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以下に5月下旬までの年齢別、性別死亡者数を示す(図7:www.socialstyrelsen.se)。

図7:www.socialstyrelsen.se

次に、70歳以上の死亡者のうち、介護施設に住んでいた人、または、在宅でヘルパーの助けを必要としていた人の、年齢別死亡者数を示す(図8:www.socialstyrelsen.se)。


図8:www.socialstyrelsen.se

スウェーデンの介護施設事情


85歳以上の死亡者は男女合わせて1973人であるが、そのうち、介護施設に住んでいたのは1190人、ヘルパーの助けを受け自宅に居住していたのは559名。合計すると1749人になる。これは死者数の88.6%となる。つまり、85歳以上の死亡者のほとんどが、介護施設に住むか、ヘルパーの助けを受けていた。年齢が下がるとこの割合は下がるものの、大多数は介護施設に住むかヘルパーを使っていた。70歳以上の死者において、介護施設に住むかヘルパーを使っていた人の割合は72%にもなる。これは、勤務者を介したクラスターが介護施設で発生し、また、ヘルパーによって高齢者世帯へ感染が持ち込まれたと分析されており、そのために、高齢者における死亡者数が増えてしまったのである。

スウェーデンでは、医療と介護は担当する地方自治体が異なる。医療は日本で言うところの都道府県に当たるRegion、介護は市町村に当たるKommunという地方自治体が担当している。更に言えば、それぞれの地方自治体には、それぞれの政治家がおり、これらは国会議員とは異なる。1992年にエーデル改革が行われ、介護施設はRegionの管轄からKommunの管轄に移った。そのため、介護施設で必要な医療の分野が弱くなっていった。常駐する医師がいないことが多く、入居者数に対する医師数も十分でないため、クラスター発生時には十分に対応することができない。

さらに、徐々に民営化が進み、その結果として、コスト削減が行われるようになり、備品の節約だけでなく、人的コストの削減も行われた。安い労働力、また、時間給で働くパートタイマーが多く動員された。通常住居に派遣されるヘルパーも同様である。パンデミック発生の際、少しでも症状があれば自宅待機が強く推奨されたが、パートタイマーの場合、働かなければ現金を手に入れることはできないため、症状があってもそれを隠して働くということが行われていた。医療現場や介護現場で働く人のPCR検査が行われなかったことも災いした。

また、スウェーデンで、安いパートタイムの労働力を担っているものの多くは移民である。移民の中には、狭小な住居に多世代家族が同居していたり、言語の問題で情報が不足していたりする者も多く、クラスターが発生しやすい要因があった。そして、パンデミック当初より移民の中にクラスターが発生してしまったが、移民が介護現場やヘルパーとしての大きな労働力になっていることも、介護サービスを受ける高齢者が多く感染する原因となった。

文=宮川絢子

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