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このように、公衆衛生庁や社会庁から発表される統計で感染が収束してきていることは、現場の肌感覚と一致しており、喜ばしい限りである。しかしながら、スウェーデンの長い冬と短い春が終わり、気候が良くなってきたことで、国民の自粛姿勢が緩んできたことは否定できず、これから感染が再拡大する懸念は十分にあると考えている。

メディアの誤報道


スウェーデン国外のメディアは、ロックダウンをしていないスウェーデンの挙動に注目しており、多くの報道がなされているが、それらの報道には間違ったものが多く、医療現場にいるものとしては複雑な思いになる。

スウェーデンのCOVID-19感染対策の顔となっている国家主席疫学者、テグネル氏は、これまでずっとロックダウン政策を否定してきた。そして、スウェーデンの死者数が多いことに関しては、「守るべき高齢者を守ることができなかった」とコメントしてきた。6月3日のテグネル氏へのインタビューでは、「もう少しやれることがあったと思う」とコメントしたことが、「スウェーデンは政策に失敗した(ロックダウンしないことは間違いであった)と認めた」と世界中で誤報道されてしまった。その誤報道に対してテグネル氏は、「スウェーデンの政策は間違っていたとは言っていない。改善の余地があるという意味である」と説明しなければならなくなった。

スウェーデンの死者数を増加させた要因


しかしながら、死亡者の90%が70歳以上の高齢者であり、80歳以上の感染者や80歳以下であっても余病のある人については、集中治療室での治療適応外とされているため、多くの80歳以上の感染者は病院で治療を受けることはない(誤解を招かないように書くと、COVID-19感染以外の疾患については、パンデミックが発生していない通常時であれば、集中治療室での治療の年齢による制限はない)。80歳以上で入院するのは、通常健康な人である。介護施設に住む、もともと病気の高齢者については、感染しても病院へ送られる人は少数である。高齢者の死亡者のうちのおよそ半分は介護施設に住んでいた人達であり、介護施設でクラスターが発生したことが、スウェーデンの死者数を押し上げた一因であると言える。


図5:www.socialstyrelsen.se

介護施設に住む人の殆どが、何かしらの疾患を抱えている高齢者であり(図5:www.socialstyrelsen.se)、2疾患以上を抱えている人が、ほぼ半数にもなる。逆に、疾患のない人は20%に満たない。つまり、介護施設での感染者の多くはICUへの入室基準を満たさず、したがって、病院に送られて治療を受ける人は少数ということになってしまう。


図6:www.socialstyrelsen.se

上の図に示すように、2000人に近い人が介護施設で亡くなっている(図6:www.socialstyrelsen.se)。

文=宮川絢子

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