新型コロナ危機が招く政情不安、世界中に広がる可能性も

Photo by Antonio Masiello/Getty Images

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミック(世界的流行)は、世界中に政情不安と社会不安を拡大させる可能性がある──国際シンクタンク経済平和研究所(IEP)は、先ごろ発表した報告書「Covid-19 and Peace(Covid-19と平和)」のなかでそう指摘している。

IEPの創設者スティーブ・キレリアによれば、医療危機とその危機の管理のために行われた経済活動の停止が社会と政治にもたらした結果が、徐々に明確になり始めている。世界は今後、この結果によって“重大な局面”に陥る危険性があるという。

報告書はまた、「世界にはこの危機を管理するための、信頼に足る手段がない」と述べている。それが先進国における富の不平等の拡大と、労働条件の悪化、さらなる政治制度からの疎外につながり、抗議活動を招く要因にもなるという。これはまた、不安を煽ろうとする者たちに、格好の材料を与えるものにもなる。

すでに米国や欧州各国では、米ミネソタ州ミネアポリスで起きた警察官による黒人男性ジョージ・フロイドの殺害事件をきっかけに、政治的な抗議デモが勢いを増している。香港では中国が導入を決めた「香港国家安全法」に反対する人たちが、抗議活動を行っている。

IEPの欧州・中東・アフリカ担当ディレクターは、こうした抗議活動は今後、より頻繁に起きるようになると述べている。

「パンデミックは政治的安定に影響を及ぼします…ここ10年間で、市民による暴動はすでに2倍に増加しました。この状況は、今後も続くでしょう」

「経済への影響は、社会にも影響を及ぼし、人々が苦情を訴えるようになります。それは抗議活動という一つの形として表れ、当然ながら、一部は暴力的なものになると考えられます。これから私たちが目にするのは、そうした状況です」

すべての国に及ぶ影響


パンデミックは世界のあらゆる地域に影響を及ぼした。だが、長期的にみれば、そのもたらす影響は地域によって、また国・地域の豊かさや貧しさによって、異なったものになると考えられる。
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編集=木内涼子

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