アポロ17号採取の石が48年後に明かす、「月にも隕石衝突」の真実

アポロ17号月着陸船のパイロットで科学者出身の宇宙飛行士ハリソン・シュミットが、着陸地点のタウルス・リットロウ谷からミッション最初の船外活動に出てステーション1でサンプルを採取している様子。撮影したのは船長のユージン・サーナン。手にしている道具はルナ・レーキと呼ばれ、1~3センチほどの岩石や岩石片のような砂利状のサンプルを採取するのに使われた。(NASA via Getty Images)


382キログラムの中の1粒……


同じく共同執筆者の1人で、ROMの博士研究員であるアナ・サーノックは、特別な月の石について次のように言う。「初めてこの石を見たとき、アポロ17号が持ち帰ったほかの地質サンプルとは鉱物の姿がまったく異なっていた。われわれが注目したバデライトの粒子は1ミリにも満たなかったが、知るかぎりアポロ計画のサンプルでは最大の粒子だった」

アポロ計画は月面着陸に6度成功し、12人のNASAの宇宙飛行士が計382キログラムの岩石や土壌を月から地球に持ち帰った。

「この小さな粒子は、直径数百キロメートルの衝突盆地が形成されたときの痕跡をそのまま保持している。それほど古い隕石衝突の痕跡は地球では見られない。重大な成果だ」とサーノックは言う。

月の石は地球のミステリーを解くカギ


アポロ17号は、「晴れの海」の東端に位置するタウルス・リットロウ谷に着陸した。

その一帯は地質学的な価値が高く、2019年4月11日にイスラエルの民間宇宙団体、スペースILの月面探査機「ベレシート」が墜落したのも同じ場所だった。

2019年11月には、アポロ17号が月から地球に持ち帰り、未開封のまま保管されていた岩石と土壌のサンプルが、NASAの科学者の手でついに開封された。

ROMのリー・ホワイト博士研究員は、月の石を研究する意義を次のように説明する。「地球の岩石は絶えず再循環しているが、プレート運動も火山活動もない月では岩石が昔のままの状態で保存されている。超高熱を伴う大規模な衝突によって月の岩石が生成されたとすれば、地球も同じプロセスを経たと考えられる。月を研究すれば、地球の初期の歴史をさらに理解できる可能性がある」

翻訳=門脇弘典 編集=S.K.Y.パブリッシング・石井節子

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