アポロ17号採取の石が48年後に明かす、「月にも隕石衝突」の真実

アポロ17号月着陸船のパイロットで科学者出身の宇宙飛行士ハリソン・シュミットが、着陸地点のタウルス・リットロウ谷からミッション最初の船外活動に出てステーション1でサンプルを採取している様子。撮影したのは船長のユージン・サーナン。手にしている道具はルナ・レーキと呼ばれ、1~3センチほどの岩石や岩石片のような砂利状のサンプルを採取するのに使われた。(NASA via Getty Images)

「2018VP1」と名付けられた天体が11月2日に最接近、地球を直撃する可能性があることが8月23日、NASAによって報告された。

「2018VP1」は直径6.5フィート(約2メートル)の小規模なもので、地球に墜ちる確率は0.41%というから、映画「アルマゲドン」が現実化するわけではないらしい。が、11月2日は米国大統領選の「前日」という運命的なタイミングでもあり、米国では話題を呼んでいる。約6600万年前にメキシコのユカタン半島沖に墜ちて「チクシュルーブ・クレーター」と呼ばれる爪跡を残し、恐竜を死滅させた巨大隕石(あるいは彗星)にも、ふと思いが至る。

実はこのたび、アポロ17号採取の石が48年後に「ある真実」を明かした。それも、その「地球上から恐竜王国を消滅させた隕石」に関するものだ。カナダのロイヤル・オンタリオ博物館(ROM)が召集した科学者の国際チームが、それと同じ出来事が月でも起きていた可能性があるとする論文を科学誌「ネイチャー・アストロノミー」に発表したのだ。

アポロ17号が持ち帰った「月の石」


月への隕石衝突を裏づけたのは、1972年のミッションの際にアポロ17号が持ち帰った月の石だった。NASAの宇宙飛行士で地質学者のハリソン・シュミットと、同じく宇宙飛行士のユージン・サーナンが採取した珍しいバデライトの粒子を調べたところ、キュービックジルコニアの痕跡が見つかったという。ダイヤモンドの代用品としても使われるこの鉱物は、摂氏2300度以上の超高温でないと生成しない。

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NASAの探査機「エブ」に搭載のMoonKAMシステムで撮影された月面の画像。(提供:Universal History Archive/Universal Images Group via Getty Images)

それほどの高熱は、大規模な衝突で月の表層が溶けた場合だけに発生する、と論文は指摘する。

大規模衝突は43億年前に起こり、初期の月で新たな岩石の生成に寄与したものと考えられる。

今回の研究結果は月の地質学に革命的な知見をもたらすものだ。月面に多種多様の岩石が存在する理由を解明する手がかりにもなりうる。

論文を共同執筆した、英国ポーツマス大学環境・地理・地球科学大学院のジェームズ・ダーリング准教授は、「想像を絶するほど激しい隕石衝突は、月の地殻の破壊だけでなく、その形成にも一役買った」と述べている。
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翻訳=門脇弘典 編集=S.K.Y.パブリッシング・石井節子

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