9つの統計値で読み解く、米国にはびこる「人種間の富の格差」

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ジョージ・フロイドの死を受けて全米に広がった抗議行動は、コロナ危機によってすでに悪化していた経済的不平等の問題を浮き彫りにした。米国の貧富の差は少なくとも1970年代から拡大しており、低所得・中所得世帯の所得水準が低迷する一方で、高所得世帯の所得水準は増加し続けている。

何世紀にもわたる人種差別の歴史のもとで、白人世帯が享受する機会やリソースにアクセスできずにいる黒人世帯にとって、この断絶は大きく深いものだ。

1949年以降の米国の所得と資産を分析した2018年の論文で、経済学者のモーリッツ・クーン(Moritz Kuhn)、モーリッツ・シュラリック(Moritz Schularick)、ウルリケ・I・シュタインズ(Ulrike I. Steins)は、「過去70年間、黒人世帯と白人世帯のあいだの所得及び資産の不平等の削減には何の進展もなかった」と結論付けた。ブルッキングス研究所は、黒人世帯の資産に対する白人世帯の資産の比率は、現在の方が今世紀初頭よりも高くなっていると指摘する。

こうした途方もない格差を、以下の9つの数字から読み解いてみよう。

16.8%


これは、2020年5月の黒人労働者の失業率だ。同月、白人労働者の失業率は12.4%だった。2月にパンデミックによるレイオフが始まる前、黒人成人の60%弱が職に就いていたが、現在その率は半数を切っている。パンデミック前の数か月間、黒人労働者の失業率は記録的な低水準を保っていたが、ここへきて悲惨な数値に逆戻りした。

1万7150ドル(約184万円)


米連邦準備制度理事会(FRB)の消費者金融調査によると、2016年の黒人世帯の純資産中央値は1万7150ドルだったと、ブルッキングス研究所は指摘している。同時期の白人世帯の純資産中央値は17万1000ドルと10倍近い。

8.7%


ワシントン・ポスト紙はFRBのデータに基づき、1968年の黒人世帯の純資産中央値は、白人世帯の純資産中央値のわずか9.4%だったと指摘した。2016年には、この比率がさらに8.7%にまで低下している。言い換えれば、アフリカ系米国人の進歩の歴史と一般に考えられているこの半世紀近くのあいだに、実際には貧富の差はわずかながら拡大したのだ。

44.3%


これは、2007年から2013年までのあいだの黒人世帯の純資産中央値の低下幅であり、世界規模の景気後退の長引く影響を反映している。この時期の白人世帯の純資産中央値の下落幅は26%。大きな打撃とはいえ、比較すると下落幅は小さかった。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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