リファラル採用で失敗しないために。導入のステップと事例

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運用の考え方


自社なりのリファラル採用制度の骨格を設計したら、運用についても検討しておくことが大切だ。

KPIの設定とレビュー


リファラル採用の運用方法は企業によって多様な形があり、成果測定についてはどれだけこの制度に重きを置いているかによって変わってくる。

エージェントの活用などのメインの採用施策があり、リファラル採用をおまけ程度に捉える場合、KPIを設定して状況を追うというよりは、制度として存在することを社内に周知することさえできていれば十分といえる。

一方、社外リソースに頼った採用を排除して原則リファラル採用一本で採用活動を進める場合は、経営陣の他に運用責任者を決め、KPIを設定し、定期レビューが行える環境を整えなければならない。

なお、その場合のKPIは採用数や紹介数などにするケースが多いが、指標があることで社員に紹介を強制する状況にならないようにする必要がある。

効果的な運用をサポートする外部ツールについては次項にて紹介する。

リファラル採用導入を手助けするサービス・ツール


HERP Hire、HERP Nurture

HERP社が提供する採用管理ツール。「社員とつながっている優秀な知り合い」のデータベース化、応募情報の一元化とリアルタイムフィードバックや社員の利用促進などに有用。

GLOVER HR

リクルートキャリア社が提供するツール。使いやすいプロセス設計や進捗状況の可視化、社員の利用促進などに有用。

Refcome

リフカム社が提供するツール。簡略な手続き設計やデータの可視化・分析、社員のモチベーション把握などに有用。

リファラル採用を導入して成功している企業の事例


実際にリファラル採用が機能している例として、外資系・日系企業それぞれの例を1社ずつ紹介する。

McKinsey & Co.


外資系大手の戦略コンサルティングファームであるマッキンゼーでは、金額は非公開ながらかなり高い報奨金を設定し、既存社員からのリファラルを促進している。

マッキンゼーに関わらず、会社のアセットが「優秀な頭脳」である経営コンサルを生業にする企業にとって、優秀な人材の確保を死活問題だ。そのため、多くの企業が比較的高い報奨金を設定してリファラル採用の促進を図っている。

メルカリ


日本の企業では、メルカリなど新興IT企業において特にリファラル採用が活発に利用されている。

経営コンサルティング業界と同様に、優秀な人材、とりわけプログラマーの確保は競合優位性に繋がる重大事項であり、メルカリでは「リファラル採用のための会食費補助」などの制度利用の促進策を設けて、社員のリファラル採用を奨励している。

最後に:リファラル採用が機能する企業の条件・特徴


ここまでリファラル採用のメリットと注意点、制度設計のポイントなどについて紹介した。最後に、リファラル採用をうまく機能させるための条件について考えてみたい。

採用コストを中長期的に抑制したい企業


リファラル採用は外部機関を活用した採用活動の内製化といえる。つまり、自社社員による自社に合った採用活動を設計、推進できるということだ。

しかし、その状況に至るまでには失敗と改善を経る必要もあるだろうし、特に導入初期はリソースを割かれることから、必ずしも「コスパがいい施策」にはならないかも知れない。

しかし、制度がワークした暁には必ずコストは下げられるので、中長期的な視野で費用対効果を考えられる企業ほどリファラル採用がフィットする。

社員のロイヤルティ、エンゲージメントを高めたい企業


リファラル採用はコスト削減に加え、ミスマッチを防ぐことが大きな目的のひとつであることはここまで解説した通りだが、そのためには社員ひとりひとりが「会社の広報担当」となる必要がある。

これまでインナーコミュニケーションを進めてこなった企業にとっては、リファラル採用の前に“そもそも”の部分から始めるハードルがあるかもしれない。しかしそれは、社員をリクルーター化することで会社理解度とロイヤルティ、エンゲージメントを高めることにも繋がる。

単なる採用施策の一つというだけでなく、社員と会社とのつながり高めるなど、より広い視野でリファラル採用を捉えられる企業こそが、成功可能性を高められるだろう。


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文=小野祐紀

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