監督から評価、学習効率の向上まで オンライン授業に融合するAI

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コロナ禍の影響により、日本でも一気にオンライン授業の導入が始まった。アジア各国では、オフラインと同レベル、もしくはそれ以上にオンライン授業の効率や精度を高めるため、さまざまなテクノロジーとの融合が図られている。

中国ではVIPKIDというオンライン英語教育大手企業の動向が目立つ。同社では、顔認識、情緒認識(感情認識)など人工知能(AI)技術を取り入れることで、受講生の学習態度をリアルタイムで分析しながら集中力を高めるシステムを実装している。オンライン授業は各個人が個別の場所で授業を受けるため、リアル空間での共同授業より教師や講師による学生の監督が難しい。そこでAIを使うことで、「監督機能」を補おうというわけだ。

VIPKIDは、AR技術を使った「変面ツール」も導入している。これは講師が授業内容に適切なキャラクターに“変身”することにより、学生に好奇心や集中力を持ってもらおうという施策のひとつだ。

中国オンライン教育企業のJiliguala(叽里呱啦)は、NLPなどの技術を通じて受講生の水準や性向にパーソナライズされた学習モデルを構築。受講生たちの質問の意図を把握し、リアルタイムで回答するシステムを開発している。また、独自のAI研究所を持つユニコーン企業のYuanfudao(猿輔導)は、音声認識、筆記認識などの技術を自社サービスに導入し、授業のスマート化に拍車をかけている。

中国で企業がAI導入を加速させるなか、韓国では大学がいち早く動き出している。鮮文大学の工学部では、従来のアナログ方式の授業や試験をAIoT(AI-Internet of Things)技術を利用してオンライン化する試みを始めている。鮮文大学が解決しようとしている課題のひとつは、オンライン授業における「評価の公平性」だ。監督が難しいオンライン空間では、学生や保護者たち側からしても「しっかりと評価してもらえないのではないか」という不安・不信が常にある。

同学部の授業では、電子ペンとカメラを通じて学生の課題進捗プロセスがクラウドに保存される。同時にAIが学生の筆記スタイル、スピード、視線の行方などを追跡。正解や課題に対する理解度を分析し、データとして蓄積していく。課題と同様、テストでも電子ペンが使用され、学生の解答プロセスとともに表情や視線のデータが収集され集中度が計算される。テスト終了後、教授は学生の解答過程を確認し評価を行い、AIによって示された学生毎の補完点などをベースに個別に課題を提示し、学習を強化していくという流れだ。

学生たちからの評判も悪くないようで、「しっかりと見て評価してもらえている」との感想も多い。

日本のオンライン教育でも、「監督」「評価」「個別化」「不正の検知」などは課題として浮き彫りになるはずだ。解決策はいろいろ考えられるが、AIやデジタル技術の融合というのもひとつの有力な選択肢となろう。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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