自由民主主義の体制下でもデータ活用と社会は共存できるのか。ダボス会議などで知られる、世界経済フォーラム(WEF)が1月に発表した「社会的合意に基づく公益目的のデータアクセス(Authorized Public Purpose Access、APPA)」は、プライバシーなどの個人の人権、データ収集機関の利益、そして公益という社会全体のニーズ、その3つのバランスの追求を提案している。
このAPPAをまとめたのがWEFの第四次産業革命日本センターだ。WEFと経済産業省、アジア・パシフィック・イニシアティブが連携して2018年に創設した団体で、中国や西欧とは異なる、日本独自の「第4の選択」の重要性を指摘している。同センターのヘルスケア・データ政策プロジェクト長の藤田卓仙氏に聞いた(第1回は『いよいよ日本でも開始、接触「確認」アプリは本当に有効か?』)。
──新型コロナウイルス対策では、個人のプライバシーの保護と感染症対策の両立が課題になっています。国際的にどのような議論が起きているのでしょうか。
3月にシンガポールでコンタクトトレーシングのアプリが政府主導で作られ、中国ではアリペイなどと組んで位置情報やQRコード、監視カメラの情報を使った取り組みが始まった。
一方EUでは、2018年に施行した、「欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)」に則って、個人情報保護を重視する立場をとってきた。GDPRでも公衆衛生のためのデータ利用は認められているが、実際のコンタクトトレーシングではかなり慎重になっている。日本と同様、匿名化された情報のみ利用、同意は必ず取ることなどを強く要求している。こうした意見がEUでは主流だったが、イタリやスペインを中心に被害が拡大したことで、ある程度の監視も必要ではないかという議論も湧き上がってきた。
プライバシーに配慮しすぎて「同意しない人のデータは使えない」「データを匿名加工するので感染者の特定や隔離に使えない」などとすると、感染症対策としての有用性は下がってしまう。我々は、そのバランスを議論することが重要だと考えている。