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2020.06.11 09:00

ソフトバンクが出資の「AI保険スタートアップ」への期待と不安

ダニエル・シュライバー(Photo by Kimberly White/Getty Images for TechCrunch)

保険加入の手続きをAI(人工知能)で合理化するスタートアップ企業「レモネード(Lemonade)」は昨年4月、ソフトバンクが主導する資金調達ラウンドで3億ドル(約335億円)を調達していた。

レモネードは6月8日、ニューヨーク証券取引所に上場申請書類を提出し、IPOにより1億ドル(約108億円)規模の調達を目指すと宣言した。同社のティッカーシンボルは「LMND」になる。

2016年創業のレモネードは、モバイル経由で安価な家財保険を提供している。賃貸物件に住む人の場合は月額5ドルから、持ち家に住む人は月額25ドルから家財保険が受けられる。ダニエル・シュライバーとシャイ・ウィニガの2人が立ち上げた同社は、昨年4月時点で米国の22の州でサービスを提供していた。

ニューヨークとテルアビブの拠点から始まったレモネードは、2019年のフォーブスの「Fintech 50」に選出されたほか、2018年の「Next Billion-Dollar Startups」にも選ばれていた。

上場目論見書によると、同社の年間GWP(総計上収入保険料:受取った保険料)は2017年の900万ドルから、2019年には1億1600万ドルに伸びている。さらに、2020年3月までの3カ月間のGWPは3800万ドルだった。レモネードの2018年の契約世帯数は42万5000世帯で、2017年の10万世帯から大きく伸びていた。

また、売上は2017年の200万ドルから2019年には6700万ドルに伸びている。しかし、損失も2017年の2800万ドルから2019年には1億900万ドルに膨らんだ。レモネードは収益化を果たせておらず、事業拡大に向けてさらに投資を行ない、今後も損失を増やす見通しだ。

レモネードはAIを活用することで、保険のプロセスを合理化しようとしている。顧客は、Mayaという名前のAIチャットボットの質問にイエス・ノーで回答するだけで、保険の加入手続きを完了できる。同社は主要顧客をミレニアル世代に設定し、「Bコープ認証」を受けた企業として、売上の一部を寄付している。

黒字化がいつになるかは不明


従来の保険の仕組みでは、未請求分の保険料は全て保険会社の利益となるが、レモネードでは未請求分の保険料はチャリティに寄付される。ユーザーは保険でリスク回避を行うと同時に、チャリティで社会に貢献できるのだ。

目論見書によると、レモネードの顧客の約70%は35歳以下だという。また、顧客の90%が初めて保険サービスを利用する人々であり、今後の大きな成長が見込めるという。

しかし、レモネードの前途にはリスクもある。新たな顧客を獲得し、成長を続けていくためには追加の資金が必要だが、同社は収益化に向けた具体的なスケジュールを開示していない。

CrunchBaseのデータで、レモネードは累計4億8000万ドルを調達している。昨年4月のソフトバンクが主導した3億ドルのシリーズDには、イスラエルのOurCrowdや、GV(旧グーグルベンチャーズ)、ゼネラル・カタリスト、Allianz、Thrive Capitalらも参加し、評価額は20億ドル以上とされていた。

編集=上田裕資

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