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サガン鳥栖のダンボールサポーター「砂段(さだん)ティーノ」(写真:クラブ提供)

いよいよ来月4日から無観客試合でサッカーJ1のリーグ戦が再開されるが、ちょっぴりシュールな応援商品がサガン鳥栖から発表された。

その名も「砂段(さだん)ティーノ」。無人のスタンドの雰囲気をにぎやかにする、休止でゼロとなったチケット売り上げを補填する、そしてそのプラスアルファ効果を全国へと発信するという3つの思いから生まれたものだ。

応援したくともスタジアムへ足を運べないサポーターの上半身の写真を、縦70cm横40cmの特殊段ボールでできたパネルに貼り付け、それをホームの「駅前不動産スタジアム」の客席に設置する。たとえ無観客試合でも、自分の「分身」であるパネルが客席を埋め、選手たちを盛り上げる。パネルは耐久性が高い耐水段ボールを使用しているため雨天にも強く、1席分の販売価格は3500円(税込)だ。

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写真:クラブ提供

ユニークな名前は、鳥栖サポーターの愛称「サガンティーノ」と段ボールを合わせたもの。漢字部分を佐賀から一文字取った「佐段」ではなく「砂段」としたのは、小さな力を結集させて闘う地方クラブの姿を、砂粒が固まって形成される砂岩(さがん)に例えたことに由来している。

課題を乗り越えたサガシキの技術


異彩を放つこのアイデアは、発案からわずか10日で発表されるに至った。サガン鳥栖を運営するサガン・ドリームスの竹原稔代表取締役社長と、オフィシャルスポンサーであるサガシキの枝吉宣輝代表取締役社長が、ほぼ同時に思いつき、企画を本格的に検討し始めたのは、5月24日のことだ。

ひと足早く再開していたドイツのブンデスリーガで、人型の段ボールでスタンドを埋め、無観客試合の雰囲気を一変させたボルシアMGのアイデアが注目を集めていたが、これに、段ボールなどのデザインや製造販売を手掛ける企業のトップである枝吉社長が大きな興味を抱いていた。

「サガン鳥栖さんとは以前からお付き合いがあり、私からブンデスリーガの例をあげて『(鳥栖でも)どうですか』とお話させていただいたところ、竹原社長もちょうど同じような企画を考えておられて。ただ、実現させるうえで『いろいろな課題がある』ことを、そのときにうかがったのです」

以心伝心というべきか、枝吉社長と同様に、ボルシアMGのやり方に共感を覚えていた竹原社長だったが、実現に向けての課題については、当初の心境を次のように明かす。

「とても面白いと思いましたが、コスト面や日本特有の梅雨、そして写真を加工する技術の問題がありました。ドイツの試合を見ると、サポーターの顔もかなりまばらで、ただ単に写真を貼り付けただけのようなクオリティーだったので、果たして日本人に受けるのかという懸念もありました」

そこで枝吉社長に閃くものがあったという。終戦直後の1945年12月に創業されたサガシキは、時代の変遷に合わせて成長を遂げ、いまでは光沢を伴う美しい仕上がりを担保できるデジタルオフセット印刷技術を持っている。また梅雨の時期でも耐えうる、高度な防水機能を段ボールに付加することにも成功していた。

サガン鳥栖の役に立ちたいと一念発起した枝吉社長は、翌5月25日の夕方には段ボール製サポーターのサンプルを作成。佐賀市内の本社ショールームであらためて竹原社長に提案し、そこで本格化した交渉はトントン拍子でまとまり、今月2日にはメディアに向けて発表されたのだ。

デジタルオフセット印刷は、元来は少部数の印刷に向いているのだが、交渉の過程で枝吉社長は「必要ならば駅前不動産スタジアムを満杯する2万席分でも、1週間以内で対応できます」と提案している。交渉の舞台裏を枝吉社長はこんな言葉で振り返る。

「ある程度の利益をサガン鳥栖に還元できるような、私たちにとってはかなりきつめの価格帯としました。私たちがちょっと腹をくくって、できるだけ安くすることで、精いっぱいチームを応援できればと思っていました」

文=藤江直人 

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