ビジネス

2020.06.14 08:30

コロナ禍で大手ハーツが倒産 米国のレンタカー文化は守れるか?


しかし、ハーツがこれだけたくさんの拠点を閉め、車を売り払うのだとすれば、旅行者にとってはレンタカーの市場価格が上昇することが見込まれるのではないかという懸念が残る。

かつてこのコラムでもとりあげたように、全米の大都市は路面電車を中心に公共交通機関の整備に力を入れてきているし、ウ―バーなどのライドシェアも大きな力を発揮し始めており、「クルマ社会の代名詞のようなアメリカを旅行するというのに、レンタカーを借りない観光客」がとても増えていて、近年レンタカーは価格が上昇していた。

レンタカーの料金は、季節や場所によって大きく変動するだけに、全体像が見えにくくなってはいるが、ますます借りにくくなってきていることは間違いない。空港からレンタカーセンターへの送迎バスの頻度もぐっと少なくなってきているし、今回のハーツように社員を3分の1も削減されると、レンタカーのカウンターに並ぶ時間が長くなるのは避けられない。

筆者の経験では、ロサンゼルス空港のレンタカーA社のカウンターに並び最長2時間待ったことがあるが、顧客の多くは飛行機に乗って団体でやってくるので、到着便が集中すると1時間そこらの待ち時間は、レンタカー会社にかかわりなく起こりうる。

もちろん、レンタカー会社の会員になって駐車ブースに直接行くという手段もあるが、前述のように場所と時間によって各社の価格の変動が激しいので、すべての会社の会員にならなければならない非現実さと向き合うことになる。

外国に行って自分でハンドルを握って移動するという喜びを実感できる国はそれほど多くないと思っているが、アメリカは日本人旅行者にとってレンタカーでの観光がハードルの低い国だ。レンタカーがあればこそ、国立公園のような都会から離れた場所でも自分のペースで足を伸ばすことができる。

ビジネスでも観光でもレンタカーを利用する機会が多い筆者としては、アメリカのレンタカー文化が、ウ―バーや公共交通との共存に成功し、長く生き残ってもらいたいと切に願っている。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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