「健康のためのカレー」という原点回帰への挑戦

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カレーといえば日本の国民食と言えるほど、私たちの生活に浸透しているメニューです。1週間で何回食べますか、と聞くのもおかしくないぐらい、頻繁に食べられているものだと思います。

2015年、食をテーマにしたミラノ万博では、日本館に大手カレーチェーンが出店していました。白米にルーをたっぷりかけた日本風のカレーは、もはや「日本食」と言ってもいいのかもしれません。

ところで、カレーと聞いて、どんなカレーを思い出しますか? 慣れ親しんだ我が家のカレー、学校給食のカレー、社食のカレー、または街の人気店や本格的なエスニック料理店などなど、いろんなシーンが思い浮かぶのではないでしょうか? 現在はレトルト商品が進化して、たとえ料理が苦手でも、家でも本格カレーを食べれる便利な時代でもあります。

インドに「カレー」はない?


そんな身近なカレーですが、その言葉のルーツはご存知でしょうか。そりゃ本場のインドでしょ……と思いきや、実はイギリスです。18世紀、インドを植民地としていたイギリスにインドのスパイスの煮込み料理が伝わり、当時ベンガル地方の総督だったイギリス人が「カレー」として紹介したといわれています。

そのため「カレー(curry)」は英語で、南インドのタミール語でいろいろなスパイスの入ったソースを指す「カリ(kaRi)」という言葉に由来するというのが有力な説。インド固有の言語にカレーという言葉はなく、香辛料を使った各地の煮込み料理を、例えばサーグ、サンバール、コルマ、ダールなどというのが、僕らの言うカレーに当たります。



この言葉のルーツだけを考えると、英語で「カレー」としたからこそ、これだけこの食文化が世界に広がったと言っても過言でなく、インド人も今ではこの呼び名を否定したりはしないそうです。

18世紀後半になると、イギリスでそのカレーを気軽に作るため、C&B社がスパイスをあらかじめ調合したものを“カレー粉”として販売しました。インドにはカレー粉というものはなく、マサラと言ういろいろなスパイスを組み合わせでカレーの味をつくっています。

ちなみに、「カレー」はその音からも「辛い」とイメージしがちですが、カレーの辛味は様々な香辛料・スパイスからなるもの。実際、辛味の代表格である唐辛子がインドで使われるようになったのは16世紀以後で、それ以前は、ペッパーとマスタード辛味付けされていました。
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文=松嶋啓介

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