ニュースサイトThe Vergeによると、IBMは顔認識技術が大規模な監視や人種に基づいたプロファイリングに用いられ、基本的人権や自由を脅かしていることに強く反発している。
IBMのCEOのアルビンド・クリシュナは、民主党議員のジェリー・ナドラーやカーマラ・ハリス、コリー・ブッカーらに宛てた書簡で、人種間の平等を実現する改革を呼びかけた。
「我々は今こそ米国が、顔認識テクノロジーが法の執行機関によって利用されるべきかどうかの議論を始めるべきだと考えている」とクリシュナは書簡で述べた。
彼はVergeの取材に対し、IBMが顔認識技術の開発と調査を停止すると話した。クリシュナはさらに顔認識テクノロジーが、同社が掲げる「信頼と透明性(Trust and Transparency)」の理念に合致しない形で利用されることに強く反発すると述べた。
IBMは、AI(人工知能)や革新的テクノロジーが責任のある、透明性を維持した形で利用されることを望んでいる。クリシュナは書簡で、同社が議会が進める警察改革に向けた施策に協力したいと述べ、警察の不適切な行ないに今以上の説明責任を負わせたいと主張した。
警察による顔認識技術の利用は近年、増加傾向にある。しかし、Joy Buolamwini やTimnit Gebruなどの研究者の調査により、このテクノロジーに人種的バイアスが含まれることや、プライバシー侵害を引き起こす懸念が指摘されている。
その結果、Clearview AIなどの企業が法的トラブルに直面したほか、フェイスブックも生体認証データを利用者の同意を得ずに収集していたとの訴訟を起こされ、5億5000万ドル(約592億円)の和解金の支払いに同意していた。
アマゾンも顔認識テクノロジーのRekognitionを移民税関捜査局(ICE)や警察に販売したことで、強い非難を浴びている。
IBMの今回のアピールは、ジョージ・フロイドの死を受けて発生した抗議デモが全米に拡大し、警察による黒人への不当な監視活動が注目を集める中で行われた。