ビジネス

2020.06.12 10:00

0.5センチ小型電池で億万長者に、爆発事故で契約白紙からの再起


高度な技術が詰め込まれたマイクロバッテリーにより、シリコンバレー企業との大型契約を勝ち取ったトイナーだが、意外なことに、その原点は旅行者向けのアイスクリーム売りにある。

オーストリアを支配したハプスブルク家が300年にわたり夏の離宮としていたシェーンブルン宮殿は現在、ウィーンの主要観光スポットの1つになっている。トイナーが起業家としてのキャリアをスタートさせたのはこの宮殿だった。ウィーン経済大学で法律と経営学を学んでいたトイナーは1991年、宮殿の敷地内に屋台を持ち込み、アイスクリームを売る権利を手に入れた。

「実を言うと、マイクロバッテリーよりも、アイスクリームを売っているほうがむしろ利益率が高かったよ。私の起業家人生の土台となってくれた」。トイナーはそう語る。

将来、どのような状況になるにせよ、ファルタは優れたテクノロジーにより、競合他社の一歩先を歩み続けることができる、そうトイナーは確信しているようだ。

「アップルとサムスンの参入により、こうしたヘッドフォンは高額商品になった。バッテリーのコストは5ユーロ程度かもしれないが、ヘッドフォンの最も重要な部品であり、購入から数カ月間で動かなくなれば、ユーザーは怒り狂うだろう」。


ミハエル・トイナー◎ウィーン経済大学で経済学、ウィーン大学で法学の博士号を得た後、ウィーンで自らベンチャー・キャピタル・ファンドを立ち上げ、数々の投資案件で成功を収める。総資産250億ドル。現在54歳で6人の子の父親。



これまで世界をリードしてきたビリオネアや起業家はこの危機にどう立ち向かったのか。ミハエル・トイナーのほか、『「過去は忘れてください」孫正義が独占告白、ウィーワーク、ウーバー、戦術の悔い』『リモートワークの救世主、ズーム創業者が語る「コロナ騒乱の舞台裏」』『世界5位の富豪がハワイでつくる「実験ユートピア」ラリー・エリソン』『10分未満の短編動画が大人気! 米テック界No.1女性富豪のスタートアップ』など、注目のForbes JAPAN7月号のお求めはこちらから。

文=レイン・マーティン 写真=レヴォン・ビス 翻訳=松永宏昭

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