アップルが仮に、検索エンジンの「DuckDuckGo」を買収し、iOSやMacのデフォルト検索エンジンにした場合、同社は年間で最大80億ドルの売上を失うことになる。しかし、この措置によりグーグルが失う売上は年間150億ドルに及ぶという試算が公開された。
調査企業バーンスタインのアナリスト、Toni Sacconaghiは投資系メディアBARRON’S(バロンズ)の6月8日の記事で、アップルが検索エンジンの「DuckDuckGo」を買収すべきだと述べた。
「検索市場で最大の勢力を誇るのはグーグルだが、iOSにおける検索の支配権を握っているのはアップルだ。我々の見解としては、アップルは独自の検索エンジンを持つべきだと考えている」とSacconaghiは話している。
グーグルは、アップルがiOSのデフォルトの検索エンジンをグーグルにする見返りとして、アップルのデバイスから生まれる年間の広告売上250億ドルの30%にあたる、年間70〜80億ドルをアップルに支払っている。アップルが独自の検索エンジンを手に入れた場合、現状でグーグルが得ている広告売上の全てを得ることは難しいにしても、グーグルから年間150億ドル程度の売上を奪うことになるとSacconaghiは分析した。
検索エンジンのDuckDuckGoの米国における市場シェアは、グーグルやBing、ヤフーに次いで4位となっている。プライバシー意識の高いユーザーに愛されるDuckDuckGoを傘下に収めることは、アップルに多くの潜在的メリットをもたらすだろう。さらに、グーグルは現在、EUで複数のプライバシー訴訟への対応に追われ、米国においても50億ドルの集団訴訟に直面している。
そしてアップルはこれまで常に、垂直統合を目指してきた歴史がある。顧客に一体化したソリューションを提供するのが、アップルの美学なのだ。
買収はアップルに利益をもたらすか?
しかし、グーグルは検索市場のリーダーであり、アップルがグーグルをデフォルトの検索エンジンから外しても、設定を変更してグーグルを使い続ける消費者も多いだろう。さらに、アップルが検索エンジンを買収した場合、当局の独占禁止法絡みの査察を受ける可能性もある。
また、アップルはこれまでの傾向として、大型買収に熱心ではなく、買収するとしたら戦略的に非常に重要な企業を、数千万ドルから数億ドルの金額で傘下に収めている。
アップルが、グーグルとの関係を損なってでも、買収に踏み切る可能性はあるのだろうか?
現代のテクノロジー業界の大手の大半は、競合と正面から激突するのではなく、共存する戦略をとっており、かつてのアップル対マイクロソフトのような対立は稀だ(例外としては、イーロン・マスクのようなやんちゃなCEOが、アマゾンに敵意を燃やす事例もあるが)。
アップルがグーグルとの関係を断てば、怒りに燃えたグーグルはPixelに今以上のリソースを注ぎ、iOSの覇権を揺るがそうとするかもしれない。つまり、アップルがグーグルに戦いを挑んでも、失うものが大きいのはアップルだというのが筆者の見立てだ。