ビジネス

2020.06.12

在宅勤務で募るモヤモヤ いま「パーソナル・コーチング」が人気を集めるワケ

Getty Images


コーチの一言で本質に気づく


もともと起業家志向があり、リクルートに入社したという木村さん。中古車情報サービス「カーセンサー」を担当する業務には前向きに打ち込んでいたが、「どんな事業で起業するか、そのテーマ探しで悶々としていた」と振り返る。



土地勘のある分野が妥当かと中古車関連の事業でプランを練り、チームを集って準備を進めるも、いまいち没頭できない自分を自覚していた。

「僕自身が深く入り込めていないから、当然、チームの心の離れていく。目標を失いかけていた時、友人から『コーチングを受けてみたら』と薦められて、藁をもすがる気持ちで試してみることにしたんです」

しかしながら、「コーチング」と検索して見つかる情報は、いかにも成功者を目指すためのスペシャルメソッドの意味合いが濃く、当時の木村さんには“温度差”を感じるものばかり。迷いの中にある自分に寄り添ってくれるコーチはいないだろうか…。

何人かとセッションを試しながら、起業に向けての迷いを打ち明ける中で、あるコーチから受け取った問いが、木村さんの運命を定めた。

「木村さんは、本当は何がしたいんですか?」

ストレートな問いかけに、最初は身構えた。どこか本心とは違う言葉が出てくる。しかし、ふと「初対面の第三者に取り繕ったところで、何になるんだ」と気づき、ありのままの気持ちを伝えることができた。「それまでの自分がいかに自分に対して正直になれていなかったかを気づかされました。相手からどう思われるか、評価ばかり気にして、自分自身が心から突き動かされるものに向き合えていなかったのだと」

“内向き”の時間を取り戻す機会を


この鮮烈な体験を機に、木村さんはそれまで練っていた事業プランをサッパリと捨て、ゼロに戻れたという。そして自然と湧き出てきたのが、「周りに感謝してもらえる、手触り感のあるサービスを、しかも、これまでにない新しい価値を生み出したい」というモチベーションの源泉だった。

同時に、自身が体験した感動、コーチングこそがその価値だと確信。必要としてくれそうな顔が次々と浮かんだ。テストモニターを募集すると3日で300人が集まったことも手応えにつながったが、何より自分がその価値を知っているという事実が、スピーディーな開発のエンジンとなった。木村さんが“運命の問い”に出会ったのは、ほんの1年半ほど前のことなのだ。



ユーザーの第1号として、相性のいいコーチと出会えるまでのきめ細かいサポートに、特にこだわっている。

今でも月に1回ペースでコーチングを受けているという木村さん。「以前と比べて、自分に対しても他人に対しても、寛容になったと思う」と語る。自分自身を俯瞰して観察するカメラが、一つ増えたような感覚なのだという。

パーソナル・コーチングの需要についても、木村さんは「実はコロナの影響はあまり関係がない」と見ている。「今は社会全体が強烈な外部からの変化に揺さぶられている状態。しかし、それは決して非日常ではなく、僕たちは普段から過剰なほどの情報にさらされて、自分を見失いがちではないでしょうか。誰かではなく、自分自身の内面の声を聴く。“内向き”の時間を取り戻すための機会を、一人でも多くの人に提供していきたいと思います」

文=宮本恵理子

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