なぜ、このようなことが起きるのか。
米紙「ニューヨークタイムズ」の番組「ザ・デイリー」6月14日ポッドキャスト配信分「The Systems That Protect the Police(警官を守るシステム)」に出演したShaila Dewan記者によれば、これにはいくつかの理由があるという。
そのうちのひとつが、調査機能(「インターナルアフェアーズ・ディヴィジョン」)が警察組織内部にあり、これが身内に甘いこと。つまりは「第三者機関という監視装置の不在」だ。
そして、Dewan記者がもうひとつ指摘するのは「公務員保護システム」の存在だ。米国の公務員は懲罰を受けた場合、独立機関に申し立てることができる。そして警官の場合、申し立てさえすれば懲罰が軽減されることは非常に多いという。
ミネアポリスのローカル紙「パイオニア・プレス(The Pioneer Press)」の調査でも、警官は解雇されても申し立てることで46%が復職していることが明らかになった。
今回の件でいえば、今後、ミネアポリス固有の事情も見逃せない。ミネアポリス警察組合、ボブ・クロール組合長の存在だ。熱きトランプ支持者でもあるクロール自身がかなり「問題のある」警官で、過去、市民からの通報は29件。そして彼はすでに、今回の4人の警官の復職のために闘うことを宣言している━━。
世界から米国へ?
今となっては5年前の「チョークホールド死」被害者ガーナー氏の娘、エメラルドさんが事件後、「人殺し(MURDERER)」と胸に書かれたTシャツを着てカメラの前に立ち、「父を死に至らしめた『チョークホールド』を違法化するために断固戦う」と誓ったことが思い返されるが、フランスでも広がった連日の抗議デモを受け、6月8日、クリストフ・カスタネール仏内務大臣が「チョークホールドを禁止する」と表明した。大阪でも1000人の人がデモに参加したし、「黒人差別」が大きな社会問題とはいえないスウェーデンですら、中学生が公園で英語の看板「#blacklivesmatter」を掲げてデモ行列する光景などが見られるという。
ジョージ・フロイド事件が世界に投げかける多様な波紋。アメリカ社会自体にはいったいどんな「新しい日常の風景」を引き寄せるのだろうか。