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2015.04.16

日本は「米国式経営」を模倣すべきではない[世界の権威に聞く「最新・企業経営論」]

イラスト=ベルンド・シッファカーデッカー


“ドル”“円”でなく人間を考えろ

日本は米国を見習うべきだとする米国人専門家は少なくないが、フェファー教授は逆だ。米国をまねる企業が多すぎると批判する。
「米国は、人々が精神の健康を保ち、いい暮らしを送れるような健全な社会ではない」

格差もさることながら、大企業のトップですら雇用の保証がないため、社員教育より自分の解雇手当に気がいってしまう。

また、「企業はコストを社会に転嫁する。公害と同じだ」と、同教授は指摘する。たとえば、レイオフ後、元社員が病気になっても、もはや医療費を負担する必要がない。失業で無保険になり、個人保険に入るだけの資力がなく、低所得層などを対象にした公的医療保険制度への加入も認められなければ、保険未加入者の医療費は、病院や納税者が払うことになる。「(企業や社会は)ドルだけでなく、人間のことも考えなければならない」

日本的経営のよさは、かつて長期雇用を保証していたことや平等主義的文化に根ざしていたことだと、同教授は評価する。

「トヨタなど、成功し続けている会社は、今も、こうした面を体現しているのではないか」

日本は米国を模倣すべきではない―。フェファー教授の言葉が重く響く。

ジェフリー・フェファー◎スタンフォード大学ビジネススクール教授。ハーバード大学ビジネススクールなどでも教鞭をとる。専門は組織行動学。主な著書は『人材を活かす企業』(翔泳社)、『「権力」を握る人の法則』(日本経済新聞出版社)など多数。

文=肥田美佐子(ニューヨーク在住ジャーナリスト)/イラスト=ベルンド・シッファカーデッカー

この記事は 「Forbes JAPAN No.10 2015年5月号(2015/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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