手や目の動きでアプリを操作 空間コンピューティングは仕事をどう変えるか

Westend61/Getty Images

本コラムでは、ここ数回にわたり、5Gがもたらす「空間コンピューティングの未来」について解説をしてきました。今回はその重要な構成要素である「パーソナルデバイス」について詳しく考えてみましょう。

新しいコンセプトを普及させるには、洗練されたハードウエアが必要です。現在のようなスマートフォン中心のライフスタイルを実現したのは、iOSと、その上で稼働するモバイルアプリでした。マルチタッチスクリーンを有するiPhoneなくして、その普及はなかったと考えられます。

パーソナルデバイスとしてのスマホの存在感は圧倒的で、5G時代もしばらくは手放せない生活が続くでしょう。

しかし、空間コンピューティングの世界観を実現するパーソナルデバイスとしては、スマホよりも、ヘッドセット型が向いています。なぜなら、デジタル世界を「常時」現実世界に重ね合わせるためには、スマホをずっと目の前にかざし続けるわけにはいかなくなるからです。

Microsoftは昨年、空間コンピューティングを実現するヘッドセット「HoloLens」をアップデートし「HoloLens 2」としてリリースしました。

このヘッドセットには一定の視野角内の手の動きを把握する「ハンドトラッキング」という機能が実装されています。つまり、現実空間上に投影したデジタルコンテンツを素手で掴んだり、移動させたり、回転させたり、サイズを変えたりできます。

空間コンピューティングでは、この「ハンドトラッキング」が、スマホにおけるマルチタッチスクリーンになるようなイメージです。

トラッキングするのは、手の動きによってだけではありません。視線の動きを追跡する「アイトラッキング」も可能です。表示されたコンテンツに視線を送ることでコマンドを選択することができます。

このアイトラッキングによる操作は独特で、選択したいコンテンツを見るときには頭を動かさず目だけを動かす必要があります。この動作は、最初は疲れますが、慣れると楽で、精度も悪くありません。

操作したデジタルコンテンツを現実空間の特定場所に固定して、他のユーザと共有できるように、「Azure Spatial Anchors」というサービスもMicrosoftによって提供されています。
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文=亀井卓也

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