支援金の財源は「税金」ではない? 経済学の新理論MMTを解説

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先日、筆者のTwitterで、Forbes JAPANに掲載されていた「財源は税金ではない? コロナ危機で崩れる「財政赤字」の神話」という記事を紹介した。筆者のTwitterは、経済学を専攻している大学生も何人かフォローしてくれており、疑問に思うことがあればすぐにコメントをくれたり、DM(ダイレクトメッセージ)で質問したりしてくれる。

今回も、紹介した記事を読み進めていくうえで不思議に思ったことがいくつかあったようだ。まずは、大学生たちから寄せられた質問を取り上げながら話を進めていきたい。

財源は税金ではないという発言


米国では世界最多となる150万人以上の新型コロナウイルスの感染者数が確認されている。今回のコロナ禍で、もっとも大きな影響を受けている国の1つといえるだろう。

米連邦政府は、新型コロナウイルスへの対策や、企業や家計への支援をするために、第2四半期に過去最大の3兆ドル(約320兆円)の借り入れをする方針を明らかにしたが、これで債務残高は25兆ドル(約2560兆円)の大台を突破することが確実視されている。

このように新型コロナウイルスへの対応に伴い政府の債務残高が膨れていく環境下、先ほど紹介した記事のなかで、米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)の元議長であったベン・バーナンキは、以下のような考えを披露している。

司会者「FRBが支出に用いたのは税金だったのですか?」
バーナンキ「いえ、税金ではありません。私たちはただ、コンピューターを使って操作しただけです」

大学生たちが疑問に思ったポイントは、ここだった。景気が悪くなれば、政府が財政出動をするのは教科書通りだが、財源を確保するためには税収が必要だと思っていたのに、「コンピューターを操作しただけ」とバーナンキが答えた意味がわからなかったという。

たしかに、日本では昨年の10月に消費増税をしたこともあり、財源は税金ではないと言われて、混乱するのは当たり前のことだ。

これについて考えるために、少し視点を変えてみよう。いま太郎が10万円を銀行に預けたとする。銀行はお金を預かっているだけでは儲からないので、そのお金を貸し出しに回す。普通なら、貸し出しする際の金利と預金に設定する金利の差額で儲けるのが銀行の一般的な儲け方だと習うだろう。

ただ、太郎の引き出しに備えて銀行は全額を貸し出すことはできないので、とりあえず花子に5万円を貸し出して、花子は自分の口座にそのお金を入金したとする。そうなると、銀行には元々は太郎の10万円しか預金が存在しなかったはずなのに、花子の預けた5万円も発生し、合計15万円の預金が銀行内には存在することになる。

一見すると、ある種の錬金術のように見えるかもしれないが、これは一般的には「信用創造」と呼ばれている。これは経済学部の学生であれば講義で習っていることだ。
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文=森永康平

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